■金沢創造都市会議 第2回プレシンポジウムを終えて
 金沢創造都市会議・第2回プレシンポジウムはバーミンガム・アムステルダムなど海外からの招待者をパネリストとした第1回の国際会議から一転して、専ら国内からの参加者を中心に「都心(みやこごころ)」をテーマとして開催された。イタリア留学から帰国直後の会議参加であったので、私自身は準備過程で充分討議に加われなかったのは残念であるが、「都心再生」というテーマは世界の都市が共通 して直面しているものだけに、緊張感を持ってチェアを努めることができ、また、多彩 なパネリストと会議を支える同友会メンバーのチームワークとが噛み合って予想以上の成果 が挙がったと思われる。以下、会議の感想を取りまとめておこう。
(1)「創造都市の世紀」への国際的胎動
 第1回プレシンポ直後の昨年(1999年)3月末に私は日本を発ち、それから約10ヶ月にわたってベースキャンプを置いたイタリアのボローニャをはじめとして、新世紀を迎えるロンドン・パリ・ローマ・フィレンツェ・ベニス・ヘルシンキ・ブリュッセル、そしてニューヨークをウオッチングして廻った。そこで非常に強く感じたのは18世紀の近代市民革命以来、約200年に渡る「国民国家の時代」が終わりを告げつつあり、「都市の時代」が始まろうとしていることである。歴史的に見れば、中世の「都市の時代」に再び戻ると言えなくも無いが、正確には、20世紀末のグローバリゼーションのメガトレンドが国境と言う「国家の壁」を古いものとして突き崩しながら、新たに「都市の世紀」を準備しているのであり、その意味では「都市のグローバル競争」が始まろうとしているとも言えよう。その際、経済・金融のグローバリゼーションが専ら、アメリカンスタンダードへの画一化を伴って進展するのとは異なって、「都市のグローバル競争」は多様性と個性を競い合う特徴を帯びていることであり、とりわけ、都市の文化的創造性を中核に置いた都市再生戦略、すなわち「創造都市」が注目されているのである。
  新ミレニアムを記念して、EUは従来、毎年1都市を指定してきた「ヨーロッパ文化都市」にボローニャ・ヘルシンキ・ブリュッセル等の9都市を選び、その文化的創造性を競わせており、一方、パリ・ロンドン・べルリン等の大都市はそれぞれ美術館を新・改設したり、ミレニアムドームを建設するなど文化施設への投資や都心の改造を積極的に進めている。いずれも「創造都市の世紀」への胎動を実感させるものであり、金沢創造都市会議開催の趣旨に合流する国際的潮流を形成してゆくものと思われる。
(2)都心を「創造空間」に
  今回のプレシンポのテーマである「都心」についていえば、留学先のイタリアの都市ではチェントロ・ストリコ、すなわち「歴史的市街地」と言う言葉が「都心」に重なり合う。特に、コムーネ(市役所)の建物とその町の守護聖人を奉るドォーモ(大聖堂)に囲まれた広場は昼間は行政と宗教の中心であるが、夕方にはどこからともなく市民が集まって政治やスポーツ、芸能などについて語り合ういくつもの討論の輪ができ、週末ともなれば即席のコンサートや映画、ファッションショーの会場に早変わりする多目的広場であり、都市の文化を継承するとともに新たに「文化を創造する空間」であると言えよう。ボローニャではミレニアムを記念した文化イべント──ボローニャ2000を契機に古い宮殿を近代的劇場に、株式取引所跡を最新のマルチメディア図書館に、タバコ工場跡をヴィジュアルアートセンターに改装して、いずれも劇団・映画サークルなどNPO的な文化クリエイターとのコラボレーションによって、さらに都心を魅力的にしようとしており、まさに創造都市の都心にふさわしいものとする実験が試みられている。
  さて、今回は創造都市をめざす金沢の都心のあり方をめぐって具体的に、統廃合の対象となった小学校を劇場に改装する、あるいは都心の歴史的遺産に「空中ポストイット」を貼って情報バンクとするなど、その「創造的活用」のアイデアが多数示され、ゲストにとってもギャラリーにとっても具体的かつ刺激的な会議となったことが、第1の成果 であろう。
  今後会議で提出されたアイデアを実験する「場」を具体的に持つことができれば、金沢創造都市会議そのものの固有性が生み出されるとともに、その舞台を提供する都市・金沢のプレステージが内外において飛躍的に高まる可能性が示されたことが第2の成果 であろう。
  そして、茶屋街会場の醸し出す雰囲気が、創造都市会議の想像力を高めることが示されたことも貴重な成果 であろう。
(3)今後の課題
  一方で、会議の話題が金沢問題に集中しすぎ、一般論としての創造都市の都心のあり方へのアプローチが弱かったこと、「地元対中央」のパネリストの応酬という枠組みから議論が発展し難いなど課題を残した。本番の創造都市会議までの検討課題として、金沢という実験舞台を通 してより普遍的に世界の創造都市をネットワークするための方法論、内容的な質を維持しつつ市民に会議をオープン化する方法、さらに、キーパーソンの選定や参加都市の固定化やチェアの選任方法などを深めることが必要になってきたように思われる。
 
 
金沢創造都市会議実行準備委員会  委員 佐々木雅幸
金沢ラウンド誕生について
ゲストプロフィール
コーディネータプロフィール
開会あいさつ
福光松太郎

プレゼンテーション
 荒川哲生
 川勝平太
 竹村真一
 田中優子
 野村万之丞
 松岡正剛
 大場吉美
 金森千榮子
 小林忠雄
 佐々木雅幸
 水野一郎  
 米沢 寛
全体会議のまとめ
委員長総括
実行準備委員会