■コーディネーター プレゼンテーション

●大場吉美
  私は金沢で生まれて金沢で育って、きっと金沢で死んでいくのではないかと思っておりますが、生粋の金沢人です。今日この場でいろいろなお話をいただきながら、自分の存在というものは何なんだろうということを思いながら聞いておりました。
  私自身は金沢の箔屋の職人の家に生まれておりまして、小さいときから職人という家族というか、生活がいったいどういうものであったかということを、身をもって体験しながら生きてきたわけです。その中で縁があってデザインの世界に入って、生活を今しているわけですけれども、よくよく色やかたちが好きだということで生業をしているわけですが、深く考えていきますと、私たちコミュニケーションをしていくデザイナーという存在は、結局、人と人、企業と人、あるいは企業と企業を結びつける、そういう仕事をしているわけです。そして、いったい何をどのようにメッセージしていけばいいかということを常に考えながら生活をしていく中で、2次元の仕事から3次元、3次元から4次元、いわゆる空間、それから時間も含めた仕事をしていくわけです。その中で、たまたまこれもご縁があって、「金沢市民芸術村」というものがプランニングされて、それを現実化するというデザイナーの任務であるそれを、つまり現実化するという仕事をさせていただいたわけです。そのときに町のあり方、都市のあり方、それから住民というか、生活者というところでの取り込み方というか、そのあたりのことをこの仕事を通 じて私はずいぶん勉強をさせていただきました。そしてその中に物を作る、あるいは表現をするという人たち、職業化していなくても、日々生活の中にそういうものを求めているという、人として常に表現をしたい、それは体で表現をする、声で表現する、あるいは目で見える手で表現をするという、つまり表現をしたいという欲求はどなたも持っている。特殊な人たちだけではなく、すべての人に表現をしたいという思いがある。そのような人たちが日々、町の中で生活をしていくということは、大変に豊かな町づくりにつながっていくのではないか、ということを考えながら進めてきたわけです。お陰様で大変にうまく運営はされていると思います。
  そのような中で、結局、人は人に興味があるというような意味というか、コンセプトというか、これがどうも町が賑わう、あるいは町が町として人が群れるという、先程、竹村先生もおっしゃった百何十万年前から人間が群れるということで、今の現在までの大変に長い歴史があるという部分での町、あるいは都市の盛衰というところに人間の本質というか、本源というか、そういったものがあるのかなということをつくづく感じながら現在はいます。
  今ここでは、私が一番先に金沢の人間として発言をしているわけですが、金沢には都心の空洞化の問題とかいくつもの問題点が出てきているわけです。人というのは四角四面 の生活というのは決してできるわけではなくて、遊びもあれば、あるいはそこで働きもあれば、あるいはそこで子どもの教育、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんの面 倒という意味合いで考えていきますと、世代間交流のできる空間づくり、あるいは町づくりというものが必要ではないか。あるいは、産業だけでなくて文化と生活とが一体になっていく町づくりが必要ではないかと、そのようなところから一つの町というものがいきいきとしたかたちで組み上がっていくのではないかと思っております。
  それと同時に、私たち一人一人がいわゆる大変伝統の深まりのある金沢であるというふうに自他共に認めているわけですけれども、ただふっと、先程もお話が出たのですが、京都の伝統産業のある一部の職種を見に行ったときに、そういう機会があったのですが、金沢にもそういう産業があるわけですが、こちらの職人さんのレベル、あるいは美意識のレベルというものをどんと超えた、すごいレベルの深まりのある職人業の仕事を見せていただいて、京都はすごいなと素朴に感じて帰ってきたことがあります。それはある程度のと ころでいいのではないかという市民意識といいますか、そういうものと、もっともっとこのレベルまでということを要求していく市民意識との違い、つまり民力の違いがそういう技を鍛えていくのかなと思いながらも見てきたわけです。
  先程、京都には大変な変化というものがある。その変化というものをどんどん取り込みながらいくという意味での魅力づくりというものをお話しされました。私たち金沢でも、いろいろな価値観といいますか、広い、あるいは不可解な価値観を取り込む寛容さが私たちにも必要になってくるのだろうということを感じながら聞いておりました。また、諸先生方のお話を聞かせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。

金沢ラウンド誕生について
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