第9回金沢創造都市会議

金沢創造都市会議2017 >プレゼンテーションA

プレゼンテーションA

プレゼンテーションA「パーソナルモビリティ」

プレゼンテーター
福岡 宗明 氏(WHILL株式会社代表取締役)
コメンテーター
大内 浩 氏(芝浦工業大学名誉教授)

 
人の移動を楽しくスマートに、ボーダレスな風景を


セッション1












(宮田) 次の「パーソナルモビリティ」で、今日はWHILLの福岡さんに来ていただきました。僕が福岡さんに最初にお会いしたのは、確かシンガポールです。元々WHILLという製品は知っていたのですが、乗せていただいたときに直感的に動きすぎて、手で操作しているのですけれども脳で考えたとおり動いているような、その場でぐるぐる動き回るようなことができてびっくりしたのです。  そのときにも、ここに人工知能が付いたらどうなるのかなどというお話もさせていただいたのですが、今回の創造都市会議のテーマ「金沢のまちづくりwith AI」にふさわしい製品ではないかと思って、今回お声掛けさせていただきました。後で実際に試していただいたり、WHILLという会社は一体何を考えているのか、その辺のお話も今日はぜひ聞いてみたいと思っていまして、楽しみにしております。 では福岡さん、よろしいでしょうか(拍手)。

(福岡) WHILL株式会社の福岡と申します。よろしくお願いします。パーソナルモビリティを造っている会社です。どういうことをやっているかと言いますと、デザインはオンロード、「すべての人の移動を楽しく、スマートに」をミッションに掲げ、誰でも乗れて誰でも乗りたくなるモビリティを造っています。  どういうことから始まった会社かといいますと、「2010年 100m先のコンビニに行くのをあきらめる」。元々は本当に小さなボランティアと言いますか、エンジニアのサークルのようなところから始まった会社で、大学のときの友達が平日の夜や土日に集まって、面白いものを作ってみようというようなことをやっていました。その中でリハビリテーションセンターに行く機会がありまして、このように言っている方の話を聞いたのです。

 たった100m先、家から出て少し歩いたらたどり着くようなコンビニに行くのをあきらめてしまう。そういうことを聞いてなぜかと考えたときに、やはり私は元々エンジニアですので、最初にまず物理的な問題を考えるのです。車椅子は行けないところが多いからだろうと。溝にはまったり、段差につまずいたり、坂道も不安定だし、オフロードは走行できない、そういう物理的な面がすごく強いのだろうと思って、物理的な側面をどうやって解決しようかということをずっと考えていたのですが、よくよく聞いていくと、物理的な問題だけではなく精神的な側面、車椅子に乗っているところをあまり人に見られたくないというか、車椅子に乗って出かけたくないという方がかなり多くいます。もちろん人によって個人差はあると思いますが、特に日本の高齢者にはかなり多いと、実際に感じています。  例えば、どんどん足が悪くなっていって車の運転は難しい、そして自転車にも乗れなくなってきた方がどうするかというと、家の中に引きこもっている方がすごく多いのです。そういう方がどんどん外に出られない、そして家の中に引きこもって活動しなくなっていく。こういう現状を何か変えられないか、そして何か物で解決できないかと考えて造ったのが、このWHILLという製品です。  Model Aと、最近出たModel Cという製品を持ってきましたが、どういうところを特徴としているか。ぱっと見て、まずデザインになるのですが、ではかっこいいとは何か、デザインとは何か、どういう価値を僕らはこれで見せられているのかというのを、動画で出したいと思います。これは、実際にわれわれの製品を購入されたユーザーのムービーです。

***ビデオ上映 開始***  
実際の結婚式で使っていただきました。
***ビデオ上映 終了***  

 この方は、普段は手動の車椅子を使っていらしゃいます。自分の結婚式という人生最大のハレの日に、われわれの製品を使っていただいたことを、われわれは心から誇りに思っています。このように、これに乗って外に行きたい、これに乗ってみんなに見られたいと思っていただけるところが、まず最大の特徴なのかなと思っています。  もう一つの特徴が、オフロードを走れることです。

***ビデオ上映 開始***  屋内も屋外もどちらも走れるということを特徴にしています。オムニホイールというロボット業界の技術を使った前輪を使うことで、屋外でオフロードも走れるし、屋内でも小回りが利きます。
***ビデオ上映 終了***
 

 最後の特徴は、iPhoneで操作することができることです。これは私が非常に誇りに思っている機能です。エンジニアの方で、「できるでしょう、ラジコンみたいなものでしょう」と思われる方が結構いらっしゃると思いますが、私はこの機能を最初に世に出したことをすごく誇りに思っています。  電動車椅子、車などモビリティ全てを含めて一般的に販売されているもので、スマートフォンからリモートコントロールできたのは、多分僕らが最初だと思います。これは技術的な側面だけではないと考えています。最近はスマートフォンから通信できるものが少しずつ増えていますが、われわれは、これを自分たちで責任を持って、そしてリスクを取ってきちんと商品化して世に出したと考えています。スマホのアプリを作っている会社の方からすると、そんなアプリはすぐ作れると感じられる方が多いと思いますが、モビリティを造っている会社で、そんなリスクを取れる会社というのは極めてレアだと思います。われわれは、こういうモビリティ全体を自分たちで開発しているので、ソフトウエア、そしてサービスをつくるときにも、リスクを取って誰より早く動けるというところが、すごく大きな特徴だと考えています。  

  実際にどれぐらい販売されているのか。なかなか数字を言うのは難しいところですが、かなり販売も広がっていまして、関東近辺では見たとよく言われます。私も今まで普通に外を歩いていて数回見かけたこともあり、今どんどん日本中に広がっています。都内では400店舗ぐらいで販売していて、金沢市ではパナソニックのエイジフリー、フランスベッド、セリオの三つの店舗があります。介護系の代理店だけではなくて、メガネの三城やヤナセなど、いろいろなところで扱っていただいています。  

  この写真は、2015年のときの東京モーターショーです。これが一つわれわれの目指している世界観を表していると考えているので、説明のために使わせていただきました。  どういうことかと言いますと、これはすごく不思議な写真で、誰でも乗れますよと試乗イベントをやったときに、老若男女、歩ける人から車椅子世代の方まで、みんながWHILLに乗りたいと言って集まってきたのです。1日に300人ぐらい、10日で合計3000人の方が試乗されました。これは結構異常なことです。  車椅子や電動車椅子というと、みんな「私が乗るのは駄目なのかな」「そういうところを邪魔してはいけないよね」と、遠慮してしまう部分があるのです。でも、われわれは、パーソナルモビリティだ、誰もが乗りたくなる製品を造るのだということを前面に打ち出していて、それでこういう風景がつくれたのです。  

  われわれは、このようなボーダレスな風景をつくっていきたいと思っています。  そして、「すべての人の移動を楽しく、スマートに」するために、これをもっと進めていきたい。そのためには、今まではパーソナルモビリティを造ってきましたが、それだけ、乗り物というだけでは、やはりこの世界観を実現できないのではないか。もっと言えば、その次のインフラストラクチャー、まちづくりや施設など、モビリティ単体だけではなく、その周りにあるサービスにまで入っていきたい。それによって、もっとみんなが外に出られるようになったり、もっとプロダクトのイメージを変えていけたりするのではないかと考えて、われわれとしては、これまでのパーソナルモビリティ事業だけではなくて、今、インフラモビリティ事業という言葉をつくって、新しい事業に取り組もうと思っています。  

  例えば空港、ホテル、美術館、クルーズ船の中で使っていただくなど、モビリティだけではなくて、どこでどのように使っていただくかというところにもう少し注力して、新しい事業を展開しようということで、例えばこういうことをやっています。

***ビデオ上映 開始***
ここから内容がパナソニックの説明になっていきます。このような形で、今パナソニックと一緒に進めています。
***ビデオ上映 終了***  

  実際にこのように施設の中で、自動運転はなかなか難しいのですが、自動停止や追従走行、そして無人返却のような機能は、技術的には十分可能なフェーズに来ていると思っています。次はどのようにしてサービスとして展開していくのかというところが重要な局面に入っていると考えています。  では、こういう施設だけでの話なのかというとそうではなくて、まちづくりにもこのモビリティは今後生きてくるとわれわれは考えています。そして、それがどのように生きていくかを考えると、具体的には電車、バス、タクシー、WHILLのような、新しいプレーヤーになれるのではないかと思っています。  先ほどの志賀様のお話にもありましたが、自動運転が今後、どんどん盛り上がっていきます。そして、まちによって最適な形は違うだろうと。東京での自動運転を使ったインフラと、金沢での自動運転を使ったインフラ、シンガポールでのインフラ、ベイエリアでのインフラというのは、それぞれ異なった形になるだろうと、私は考えています。そして自動運転技術の発展に伴って、それこそAIの発展にも伴って、モビリティ同士の連携が、すごく重要なフェーズに入ると私は思っています。  具体的にどういうことかというと、例えばバス停まではWHILLで行く。そしてバス停で無人バスに乗って降りた後、ショッピングモールのバス停でWHILLが迎えに来て、そこからはWHILLに乗ってショッピングをする。電車やタクシー、それこそバス、タクシーの組み合わせかもしれません。それぞれがAIというか、ある程度情報を持って、最適な経路、最適な利用方法という形でいろいろ組み合わさっていく。それはユーザーによって異なると思います。  

  皆さんから、「このモビリティは足が不自由な方向けですか」という表現で聞かれる機会がすごく多いのですが、そのたびに私はこう答えています、「それはすごくグラデーションのある話ですよ」と。100m歩けない方、10m歩けない方、1m歩けない方、上半身もなかなか力が出ない方、これはすごくグラデーションのある話なのです。われわれの製品は、その中で100mぐらい歩けない方に対して、非常に利便性が高い。そして1m歩けない方から100m歩けない方によく使っていただいているという感覚値はあります。そういう方はすごくたくさんいます。  ではそういう方が、ショッピングモールに行ったときに、無人バスから降りてその後ショッピングを楽しめるかというと、それはそれで難しいのです。今後、高齢化社会という話の中で、そういう方はどんどん増えていく。そしてその方が、バスから、タクシーから、そして自動車から降りた後をサポートする新しいプレーヤーに、僕らはなれるのではないかと思います。そういうインフラが今後必要とされていくのではないかと思っていて、ここでどんどんまちづくりというところに入っていきたいと思い、今回このような形で参加させていただきました。  簡単ではありますが、できる限りディスカッションの時間を取った方が面白いのではないかと、少し短めの説明にさせていただきました(拍手)。

(宮田) どうもありがとうございました。どのようなことを考えているのかという話を大体聞いたのですが、こういうものは体験してもらうのが一番早いですよね。どなたか乗ってみたいという方はいらっしゃいますか。会場からでも。  さっきの話だとたくさんいたという話だったのですが、なかなか。皆さん、乗ったことはありますか。よかったらどうぞ。

(福岡) シニアカーのようなものですと、車のステアリングのような動きになるのでどうしても回転半径が大きくなって、屋内で使うことがすごく難しいのです。そして屋内で使う機会というのは、実は意外と多いです。屋内というのはすごく幅広い意味で、ビルの中やモールの中、スーパーの中まで含めていますが、やはりそこまで行けないとなかなか外には出にくいという話があります。

(宮田) イオンモールなんて大きすぎますものね。

(福岡) 大きすぎます。でもモールにもよるのですが、千葉の本社のモールになると異様に大きいのです。

(宮田) そうですよね。ディズニーランドにこれが置いてあるといいかもしれないですね。僕の兄は足が悪くて、先日、実家に帰ったら、僕は今日の話はしていなかったのですが、「お前WHILLって知っているか」と聞くので、「何で知っているの」と言ったら「いや、欲しいんだ」と。それくらい浸透しているのだと思いました。

(福光) 小回りが利きますが、構造的には前の方の車輪が動力なのですか。

(福岡) このModel Cに関しては後ろが動力です。モーターが二つ付いている形になっていまして、Model Aでは四輪駆動で、よりオフロード向きという形で、今2モデルを造っています。

(福光) だからこれ、小回り。方向を全然切っていないのですが、左右の車輪の回転差で回っているのですか。

(福岡) そうですね。オムニホイールを使っているので、いわゆるキャスターよりもむしろ小回りが利く。キャスターだと、やはり前後という動きが意外と難しかったりして、前に行った後、後ろにすぐ戻れないのです。前に行った後、後ろに行くときにくるんと回るので、少しずれたりして気持ちが悪いところがあるのですが、そういう部分に関しても実は素直に動きます。そして何より、キャスターは前輪をどうしても小さくしかできないのですが、それに比べてオムニホイールは2倍以上の直径になるので、屋外においては段差をどんどん越えていけます。

(福光) 前輪に特徴がありますが、それはどういう構造のタイヤなのですか。

(福岡) これは24個の小さなローラーで組み合わせられたもので、1個ずつが回るのです。

(福光) それは、全部横に動くわけですか。

(福岡) はい。

(福光) なるほど。そういうことですね。  この間、羽田空港で飛行機を乗り継ごうと思ったら、スポットからスポットまで1kmありまして、急いで歩いて15分かかったので、これがあったらよかったと思います。

(宮田) 本当ですよね。羽田は少し遠すぎますよね。

(福岡) ぜひ羽田でもこのようなものを導入していきたいと考えています。

(宮田) 先ほどの空港での実証実験は、パナソニックのものでしたよね。 (試乗者) ここを離せばブレーキが利くのですね。

(福岡) そうですね。手を離せば動かないです。

(宮田) このModel Cで今、幾らでしたか。

(福岡) 今、これで45万円になっています。

(福岡) 介護保険の対象になっているので、大体月々2万5000円でレンタル、実際には自己負担は2500円の方が多いです。

(大内) そのModel Cは分解できるのですよね。

(福岡) はい。

(大内) ですから、少し分解の話もしていただけると。かなり遠くで使用する場合には分解して車に乗せて。 今回も確か東京から分解して持ってきていただいたのですね。

(福岡) いざというときにタクシーに乗れるとか、そういうことがすごく重要ですし、あと家族で、例えば1週間に1回かもしれませんが、ちょっと旅行へ行こうかというときに車に積んで持っていくとか。実際これで、すごく操作性も高くて気に入っていらっしゃる方も多かったのですけれども、自分の車に積みこめないと言われるケースが結構多くて。

(大内) 今は2機種あって、Model Aというのと、今日持ってきていただいたのはCで、Model Cが分解できて、Aは機能的にはすごく優れているけれども分解はできないのですね。

(福岡) Model Aは、より走破性能に振って、どこでも走るというもので、先日は高尾山の頂上まで行ってきました。Cは、分解すればいろいろなところに行けます。

(大内) 大変面白い話で、多分会場の皆さんも乗ってみたいなと思われたと思います。この前、実は東京モーターショーでもこれが展示されていて、私もお邪魔してそこにおられる方とお話しして、なるほどなと。福岡さんのプレゼンにもありましたけれども、意外に関心を持ったのは実は若い人たちで。

(福岡) そうですね。

(大内) 横浜の汽車道をご存じかと思います。桜木町の駅からずっと赤レンガ倉庫 に行くところに通路があるのですが、そこでデモをしたら、若い人たちはみんな乗せてと言っていたけれど、お年寄りたちはちゅうちょしていました。

(福岡) それはすごく面白い風景でした。僕もずっとそこにいたのですが、よくあるパターンとしては、カップルで来て彼女が乗って男は歩くケースや、子どもが「ちょっと乗りたい」と言って両親が「乗せていいですか」という形で乗るケースが多かったです。  そして、ご高齢の方は、抵抗感が結構強いのです。これを見ても「これ、いいね」と言ってくださる方も多いのですが、やはり「でも、車椅子でしょう」というような。

(大内) 先ほどのプレゼンのときにも、お年寄りの方がどうもそういうことでちゅうちょしているようで、どうやってそれをブレークスルーするかということですが、この前福岡さんと打ち合わせしたときに、伊勢神宮で使われているということでしたが、どういうふうに使われているのですか。

(福岡) 伊勢神宮はやはり砂利道がすごく多くて、その中で貸し出しをしています。事前予約が必要ですが、予約していただければ、そこで実際にWHILLを貸し出して使っていただくことができます。

(大内) 伊勢神宮だと来られる方全体の年齢層も絶対上ですから、プレゼン用でも伊勢神宮で高齢の方がかっこよく乗り回しているフィルムをたくさん流されたらいいかと思います。

(福岡) ありがとうございます(笑)。 (大内) 私も歩いたことがありますが、伊勢神宮の砂利はものすごく深いので、あれで十分乗れるのだったら兼六園でも十分いけると思います。

(宮田) 兼六園に行くまでのところでも乗りたいですけれどもね。あの坂道も。

(大内) 行く前も、兼六園の中も。これはいろいろと許可も得なければいけない、いろいろあるかもしれませんが、十分いけると思うのです。  ちょっと申し訳ないですけれど、今、一番この会場の中で、WHILLが欲しいと言っている私の息子が、実は今来ています。彼は生まれたときからずっと車椅子で生活しているのですが、彼の視点からもう少しコメントを差し上げたいと思います。 普段はシステムエンジニアなのですが、日本全体でいろいろなタイプの身障者を集めて、さまざまなイベントをやる、あるNPO団体があるのですが、そこの役員もやっています。

(渡邊) 渡邊裕介と申します。ユニバーサルイベント協会から来ました。  私たちは、ダイバーシティというテーマを社会で実現するために、まずイベントがタイバーシティでないといけないということで、障害という言い方もするのですが、さまざまな特性のある人たち、男の人、女の人、外国人を含めた形でイベント参加できるような活動をしています。  今日は大内先生からご紹介いただきまして、こちらにWHILLも来るということで、一回だけ僕も乗らせていただいたことがありまして、すごくいい製品だなと認識しています。個人的には所有したいのですが、僕の考える使い方だと、ちょっとまだ値段的なものが厳しいと思っています。でも、分解できるというのがすごく革新的だと思います。どうしても高齢者もしくは障害がある方の乗っている電動車椅子と一緒に移動しようとすると、すごく重量がネックになってしまうのです。どうしても女の人1人、男の人1人で移動する場合でも介助ができない、もう支えられないというのがネックになるのです。スマートフォンで動かせるというのも革新的だったのですが、電動車椅子がここまで分解できるというのは、すごく私としては、インパクトを覚えました。

(福岡) ありがとうございます。もっと何かいろいろ、どんな質問が来るのかと構えていたのですけれど。

(渡邊) 私も一人旅をよくするので、伊勢神宮に行っていた時期がありますが、手動で行ったので砂利で撤退したのです。  やはりよく思うのは、出先でちょっとしたモビリティが欲しい。私は手動車椅子なのですが、タクシーに簡単に乗れるのですが、降りたときに段差がある、砂利があると、限界がどうしても出てきてしまうのです。整備された街中、例えば駅前など、本当に都市計画されているところはどこでも行けるのですが、路地に入って面白そうなところへ行こうとすると、急に段差などの路面の制約を受けてしまうことが多々あるのです。そういう意味では、手動の車椅子以上がModel Cでもあると思うので、使える機会があればどんどん使いたいと思います。

(福岡) そうですね。「買うまではいかないけれど、こういうときに使いたいんだよね」という声を頂くことが結構あるのです。そういうことを踏まえて、先ほどの話に戻りますが、インフラストラクチャー。テンポラリーのサービスとして使えるような枠組みも広げていきたいと思っています。

(大内) それでは、さらにWHILLを進化させるというか、今日はAIが全体のテーマなので幾つか質問したいのですが、モビリティ同士の連携を図りたいことのうちの一つに、今はスマホで動いていますが、例えば先ほどの志賀さんの自動運転の場合には、さまざまなセンサーが全体、3Dの空間の中で自分を動かしていくというお話がありました。WHILLも多分、技術的には可能ですよね。

(福岡) そうですね。空港ではLiDARなど複数のセンサーを付けて、それを統合して周辺環境を認識して走るということを実際にやっているので、技術的には可能だし、場合によっては車よりも先を走るぐらいのダークホース的存在になるのではないかと結構思っています。正直な話、すごくシンプルな話をすると、車はやはり速いのです。150m先、200m先まで見なくてはいけませんが、WHILLであれば3m先ぐらいまででいいわけです。それぐらいまできちんと認識できれば、止まることができます。そして、いざというとき、車と違って、止まれば何とか安全というところも、正直なところあります。そういうことを踏まえると、急速にどこよりも早く自動運転、無人運転などの先進的技術が入っていくのは、ひょっとしたらこの分野なのではないかと私は考えています。

(大内) そうですね。このWHILLや、似たようなものですと、石川県の方は皆さんご存じなのですが、意外に東京で知られていないことで、実は輪島で、電動車椅子の自動運転実験を既に何回かやっています。輪島の街中で、先ほど志賀さんからもお話があったように、ある程度ルートが決まっているところを自動運転していて、観光客が使われたり、あるいはお年寄りが使われたりしています。  
  もう一つは「ふらっとバス」で、今、金沢の市内で4ルート走っています。これも実はいろいろな経緯があります。金沢の旧市街、ご存じのとおり金沢のまちは、そもそも自動車がない時代につくられたまちで、そういう町並みや街区が今でもそのまま残っているというのは金沢の特徴でもあるわけです。しかし、そういう細街路にあるような商店街の人たち、あるいはそこへ行く顧客たち、あるいは観光客にとって、非常にいい場所がたくさん、実は大通りではないところにあります。そこへどうやって人を運ぶかというために、いろいろ苦労されて、今、小型のバスが、4ルート実際に動いているのです。  
  これもそのうち自動運転で動くことを想定したらいいと私は思うのですが、どうしたらいいのか。例えば、さまざまな、ここに段差があって、ここでWHILLは困難をきたしたとか、あるいはバスの側、あるいは電動カートの側でトラブったり、あるいはうまくいったりというのを、結局情報としてクラウドに上げて、その多様なビッグデータをみんなが上手に使うようにすればいいのではないかと思います。そこはどのように考えたらいいですか。

(福岡) そうですね。マップづくりのお話なのかなと考えるのですが、いわゆるバリアフリーマップの作成に関しては、私もいろいろな団体、関係省庁の方からヒアリングを受ける機会が多いです。そのときに私がいつも言うのは、一つの会社だけでは駄目だよと。いろいろなプレーヤー、データを取る人、そしてデータを統合する人、そしてそれをサービスとして提供する人、そういういろいろなプレーヤーが関係して、一体となって進めないと難しいのではないかということです。私たちは、常にデータをクラウドに上げる枠組みに関しては、協力することを表明しています。  そして、クラウドに上げる仕組みという形では、先ほど説明していなかったのですが、実は3Gの、いわゆる携帯通信回線が一部製品にはデフォルトで付いています。特にここにあるものにも付いていまして、これが外れているというのはサーバー側から確認可能です。エラーが起きれば、これが直接サーバーに入れて上げて、そしてそのデータはウェブから確認できます。そして、そこに対してGPSの機能を付けて、どういうルートを歩いたかをトラッキングすることは可能です。  ただ、これは個人情報保護との兼ね合いになってくるので、実験的には可能ですが、そういう機能のデフォルトの搭載に関しては、ディスカッションが必要というところです。

(大内) そうですね。確かにデータというものは、個人情報などいろいろ断った上で上げなくてはいけないところがあります。ただ、道路に関して、どこでWHILLは苦労しているかとか、あるいは全自動のバスはどこでどんな困難に遭っているかというのがプライバシーに抵触するとは、僕は思っていません。それを共有していくことによって、道路というか道、全体の空間をどのように改善したらいいかというふうに、つなげていく必要があるだろうと思うのです。

(福岡) そうですね。私は、やり方はどちらかというと二つあると思っています。実際のコンシューマー(使用者)の方が走った形跡をデータ化していくというのと、もしくは割り切ってしまって、例えば1日どこかの社員の人が歩いていない、カバーしていないエリアを一気にカバーする。どちらが効率的かという議論はあるかと思います。

(大内) なるほどね。

(福岡) われわれの方も、例えばこれに大規模な、かなり高価なLiDARを取り付けて、これは時速6kmなので10時間走っても60kmぐらいしかカバーできないのですが、仮に1000台ぐらい一気に投入してやってしまえば、20日ぐらいで金沢市内をほとんどカバーできると思うのです。そういう形でデータを一気に取ってしまうという方法の方が、実は効率的なのではないかと思ったりもします。

(大内) これは後のセッションでも出てきますが、シェアするというタイプのものは、実際どこでやられているのですか。空港でというのが一つのタイプのシェアですけれども。

(福岡) 空港では、どちらかというとシェアというよりは、設備としての利用という形に近いと思います。横浜での実証実験も、シェアリングというか貸し出しに近いです。それよりもっと、このモビリティは自由にやれるのではないかと思っているのが、何かステーションに行って、そこで貸し出し処理するのではなく、常に金沢市内をぐるぐる走って、手を挙げたら「乗る?」と聞いてくるぐらいフランクな、そういうモビリティになっていくことが可能なのではないかと思っています。

(大内) なるほど。会場から、もし。ぜひ皆さんの方からも。

(宮田) 水野先生どうぞ。

(水野) 大変面白い製品を造っていただいてうれしくなります。  少し違うのですが、パーソナルモビリティといった場合、この場合は割と歩行圏の距離の中のパーソナルモビリティかと思うのです。これからの都市交通というか、都市内交通というか、移動手段としては、都市内ぐらいのスケール、20km、30kmを移動するパーソナルモビリティもあるのではないかと想像しているのですが、例えば先ほどの志賀さんの日産でいうと、1人乗りか2人乗りの何かを造っていますね。

(志賀) 2人乗りです。

(水野) トヨタもホンダも造っていますが、なかなかあまり普及しないでいます。パーソナルモビリティという場合に、もう少し広域で動くようなパーソナルモビリティについては、どうお考えなのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

(福岡) そうですね。パーソナルモビリティという言葉は、実はなかなか幅広い言葉で、いろいろなモビリティがあります。そして、われわれは最初にどのようにして会社ができたかというところからも説明したとおり、車椅子ユーザー、そして歩行が困難な方に対して新しいソリューション、新しいブランド、そして新しいイメージの製品を届けたいというところからパーソナルモビリティという言葉を使っていまして、実際の道路交通法上では電動車椅子として走行しています。  ですので、広いパーソナルモビリティというくくりの中で、どちらかというと車道を走るものは、われわれより圧倒的に車に近いと思っています。なので、車のグループの中の一部であって、われわれはどちらかというと歩行者領域の方、そして屋内まで入るというソリューションに注力していくべきだと考えています。  
  時速60kmのものでスーパーの中に入っていくことは、さすがに困難だと思いますので、われわれは中まで入っていけるモビリティだと思っています。  そして都市圏20km、30kmという表現があったかと思いますけれども、僕はそれも都市によって違うと思っています。ある都市においてはそうかもしれないけれど、ある都市においては、実は商業エリアと居住エリアが200〜300m、多くても500mぐらいの距離でつながっていて、そこを行って帰って来られればいいまちもあると思うのです。実際にそういうところから相談を受けたこともあります。そういうところに関しては、WHILLをうまくAIを使って提供できれば、新しい価値になるのではないかと思っています。

(水野) もう一つだけ画像を用意してみたのですが、左の上に日産のリーフがあって、それ以外に自転車の類い、これも実は今、随分いろいろなタイプのものが出てきています。普通にママチャリに電動の機能を付けて、子どもを乗せるタイプもあれば、かなり早く走れるとか、あるいはタンデムのようにするなど、いろいろなタイプのパーソナルモビリティのものが共存していくことを前提に、これから道という空間をどう設計するかということになるのではないかと思います。  
  単純に歩道を広げればいいかというと、下手をすると自転車にどんどん占拠されてWHILLも走りにくいし、歩行者との事故も起きるという問題もあります。今、いろいろなモビリティが可能になっていることを前提に、道をどう設計したらいいか。何か福岡さん側から提案か何かおありだったら。結構難しいテーマなので、後で、また明日でもいいのですけれども。

(宮田) でも、この写真の中で、家の中に入って違和感ないのはWHILLだけですよね。

(水野) WHILLもそうです。でも、電気自動車は極端な話、排ガスを出さないから、家の中でもいいのですよ。

(宮田) いや、あのでかいのはきついです(笑)。

(水野) でかいのはきつい(笑)。でも、例えば排ガスを出さないというと、レストランの横に置いてあってもいいわけですよね。

(宮田) はい。最後に何かあれば。

(福岡) 実際そういう質問される機会が多くて、実は結構迷ってしまうのです。われわれとしても、別にインフラを改造する側にめちゃくちゃ負担を掛けたいわけではなくて、実際のところ歩道をすごく広くした方がいいかというと、それも歩道によって、すごく人がいっぱい通るようなところだったら拡張した方がいいだろうし、歩行者がそんなに走るわけではないというところであれば、別にWHILLはそのまま走れるという話もありますし。

(水野) 例えば真ん中の写真などは、簡単に言うと、今までの在来のガードレールのようなものを撤去しているわけですよね。ですからあの空間をどういう使い方をするかというのは、結構フレキシビリティがある。例えばそういうことがあり得ますよね。

(福岡) なかなか今、すごくいい回答を出せなくて申し訳ないのですけれども、おっしゃるとおり、自転車と歩行者、WHILLがうまく共存できる方式はどのようなものかというのは、まだ答えが今すぐには出せない状況です。

(宮田) 金沢のまちで、WHILLが勝手に動いていて乗るというようなことは、僕は結構面白い世界観だと思うので、ぜひその辺を検討してみたら面白かなと思います。福岡さん、今日はどうもありがとうございました(拍手)。

 

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