金沢学会プロジェクト報告
「家守制度」― リーディングプロジェクトによる実現化へ ―
     

報告者:福光松太郎
 
おはようございます。ほかの学会報告の皆さんに丹念にするようにとお願いしたら、私の時間は1分しかなくなりました。急いでやらせていただきます。(以下、スライド併用)

● 家守というのは、黒トカゲではなく「家を守る」と書くわけで、前回の金沢学会で大きなテーマになりました。これは、政策投資銀行の提言したものですが、江戸時代に家主に代わり店子の選定や育成、その町の一種のマネジメントまで差配した制度であったと書いてあります。

● そして現状ですが、金沢の都心ビジネス街の現況ということで、これは香林坊から武蔵が辻へ来ています。空室率が、金沢市全体では少し改善して0.5%減っているのですが、ここの南町はまた0.6%増えて、現在は26.6%です。これは、借りてほしいと思っている人の床がこれだけ空いているということで、今貸すかどうかと思っている人は分母に入っていないとすると、見かけの半分ぐらいは空いているということです。

● そして、市のほうでも、非常に丹念に政策を執っておられまして、定住促進、にぎわい創出、これはアートアベニューにぎわい創出事業です。これは、広坂通りから駅の東口まで、ずっと補助制度などを持っておられるし、事業所有地は後で具体的にお話しします。
 それから、ITビジネス企業ということで、武蔵が辻のエムザという所の中に、一つ「ITビジネスプラザ」を、SOHOの小さなオフィスの人たちのために作られて、満室ですし、「金沢ビジネスプラザ南町」も、今の南町の中のビルの1フロアを使われて、SOHOオフィスを作られました。これも、ほぼ満室ということです。

● そして、中心市街地業務機能集積促進事業ですが、今の空き床を埋めるための助成を作られた。オフィスの賃料が、ここを借りると3年間、半額までになります。そして、備品購入引越し費用も半分持ちましょうと。新規雇用一人当たり50万円を出しましょうと。そして、オーナーは最大1億円、オフィスフロア機能向上を支援しますと。1年度に5000万円ですか、通期は1億円という大きな助成制度を、合計で1億円ですが、そういうものを用意して、埋まるための政策を打っておられるわけです。

● そして、私どもが今、市と一緒に検討しておりますのは、「金沢型の家守というものは何だろうか」ということを議論しております。これは、なるべく民間主体でできないだろうか。民間ならではということや、我々地元経済界がバックアップして、行政と共同していく家守が作れないだろうか。これは、世田谷などいろいろな所で、一棟のビルをSOHOで埋めていくような家守は部分、部分にはありますが、金沢の場合はゾーンやストリートという考え方なので、一種の社会実験としてのリーディングプロジェクトという役割も果たすのではないかと思っております。そういう意味では、エリアマネジメントの呼び水といったような仕掛けも必要であろうと。
 それから、何といっても入っていただく方々に、都心型ビジネスのサポート、あるいは創造といった意味で、必ずしもSOHOオフィスだけではなく、さまざまな業種の方々に集まってきてほしいと思っておりますし、またそういう方々に、多様なビジネスサポートを我々が提供できないだろうかといったことも検討している最中です。

● そして市と一緒に、いろいろな意識調査を行っております。今、市のほうで中間でまとめておられて、もうすぐ全部がまとまりますが、この南町のビルのオーナーの意識調査をしました。その方々は、「金沢型の行政や民間が一体となった家守事業が行われるとしたら、協力を検討したいと思いますか」という問いかけについては「ぜひ検討したい」「条件によっては検討したい」という比率で、家守に期待があることが分かりました。

● それから、すでに武蔵のビジネスプラザ等々、入居しておられますSOHO事業者、小さなオフィスの方々の意識を調べて「都心で事業を行うメリットは」と聞くと、やはり非常にイメージがいい、信用力が上がる、情報やビジネスチャンスが得やすい、人々との交流がしやすい、交通の便がいい、町中の雰囲気がいい、県外企業に説明しやすいといったことを言っておられて、「家守に期待しますか」ということは、「地元の優良企業との交流やビジネスの紹介があれば大変ありがたい」と。それから、「電話の受付など、ビジネス支援サービスなどがあると大変いい」と。要するに、共同でこういうことを受けられるといいと言っておられるわけです。入居者同士のビジネスマッチングができていないので、そんな機会があればいいということも言っておられます。

● そこで、さらに金沢型家守の基本方向として、やはり集まっていただく、床を埋めていただくためには、多種多様なビジネスを集めた方がいいということ。それから、新たに金沢に進出していただく企業を促すことも大変大事なことで、金沢の中の人が移ることも大事ですが、そういうことを大きく考えた方がいいのではないかと。そして、入居していただく方へのビジネスチャンスの提供ができないか。そしてまた、ビジネスの御用聞きといいますか、先ほどありましたように、基本ベースサービスのようなことができないだろうか。また、市があれだけの助成制度をお作りになっているので、それをうまく使っていただけるような、コーディネートのサービスができないだろうかということを考えました。

● 今後の進め方として、そのような家守事業、あるいは家守制度というものが、これで儲かるわけではありませんが、やればやるほど損が出るのでは続きませんので、トントンになるにはどうしたらいいかを考えておりますのと、家守という事業主体の在り方は何がいいのだろうかということ。それから家守として、どのようなことを空きフロアの方々に適用するのか、回収プランをどんなふうに検討していくのか、これらの方法論です。そして、当然全部を含めた事業内容などを今、検討中で、金沢型の家守制度、家守事業をなるべく早く作っていきたいということで、検討を進めているところです。これは、家守のその後のご報告です。
 以上、お聞きいただきましたように、金沢学会や創造年会議で出ました提言で、ほぼ具体的で重要と思われるものにつきましては、この金沢学会の皆様が、ほとんどそれぞれに座長や委員長になって、行政と一緒に協議会や委員会を作っていただいたり、非常に具体的に進むことができるようになってきております。今日も県からご出席ですし、市からも局長がご出席ですが、非常に密接にこういう政策の実行に入れる体制ができてきたことは、まことにうれしく、ありがたく思っているところです。以上で、これまでの報告を終わります。ありがとうございました。
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