金沢学会プロジェクト報告
「金沢の夜景をデザインする」
 ― 灯りをテーマにしたまちづくりの動き ―
     

報告者:石川貴洋
 
「金沢の夜景をデザインする」とは、どういう提案であったかをおさらいします。ここにあるように、日本の昼の景観は、あまり評判がよくないということがありますが、夜は美しいという評価もされるということがあります。美しい灯りで演出された都市の空間は、人生を楽しむ上で重要な装置であると。そして、日本独特の灯りの文化もある。そういった背景を踏まえて、金沢の魅力を夜景で演出できるのではないかということです。

● 具体的に、このような五つのご提案がありました。シースルーシャッターにして、夜に店が閉まったあとも、明るい町並みを作ったらどうかということです。それから、ショーウィンドウに金沢ならではのお宝といいますか、工芸品等を展示したらどうかということです。それから、夜の金沢の夜景の美しさを演出する計画があってもいいのではないか。それから、都市のポイントを夜景の美しいルートで結ぶ、そういう回廊計画もあったら素敵だという提案です。それから、灯りをテーマにしたイベント、灯りの夜祭です。こういったことが、具体的な提案内容としてあったわけです。
動きがすでに出ています。あるいは、この提案と前後して、行政その他で取り組みが出ているものもあります。一番上のものは、商店街を対象にした助成制度の中にメニューができています。このお宝ディスプレイは、お宝という範疇ではないですが、大学生の人たちのアート作品を飾ったりされてきています。金沢の演出は後でお話ししますが、市が条例を作って取り組みを始めています。回廊計画は、県がモデルルートを作って取り組んでいこうとしています。一番下の夜祭計画は、広坂通りと金沢工業大学の皆さんを中心に動きが出ているので、それを少しお話しします。
 この提案のあと、前回ご報告しましたが、広坂通りで灯りを考える社会実験をやりました。ここにあるように、広坂通りに数タイプの歩道照明を仮設して、皆さんに評価を頂くことをしました。それを前回ご報告したわけですが、そのあと、先ほどお話ししたように、こういった動きが出ています。

● 最初に、石川県の灯りの回廊です。ここがお城ですが、何筋か3色の色があります。都心の中心のエリアで、こういったルート設定と性格づけをして、灯りでつないでいこうというものです。こういうことによって美しい景観を作って、にぎわいを創出していこうということを検討して、計画をまとめられたわけです。

● その計画が少しずつ動いているわけですが、ここはいもり堀跡緑地で、ここが旧県庁の隣の広坂緑地です。こういう社会実験のときに、皆さんに仮設して評価してもらった、上からこうこうと照らすのではなく、低い位置から、優しい感じの灯りで照明してみたらどうかということを実験では提案したわけですが、その結果を生かして、こういった低いポール型の照明を並べて、こういう感じの照明が広場の照明として採用されて整備されております。

● これが、同じく昼間です。こういう具合に並んでいます。これが旧県庁です。それから、いもり掘りの跡の緑地にも、こういうポール型が並んでおります。ここは歩道で、歩道の正面にも、こういう優しい灯りが並んで整備されたところです。

● 駆け足ですが、次にいきます。金沢市の取り組みです。金沢市では、景観形成に熱心に取り組んでおられるわけですが、夜間景観の条例を制定されました。光害の防止をうたっての条例は各地で幾つか例がありますが、美しい夜景を作ることを前面に出した条例は、全国でもユニークなもののようです。先ほどの沿道景観の形成と同じように、全地域を七つのタイプに類型化して、各地域を定めると。そのタイプごとに、望ましい照明環境を示して誘導していくということです。特に美しい景観、夜景を積極的に作っていこうというところは、夜間景観形成区域に指定して、先ほどの沿道景観と同じように、事前チェックもしながら積極的に誘導していきたいということです。
 そのチェックに当たっては、都市計画審議会の専門家の方や、照明の専門家の方をアドバイザーとして委嘱して、専門家の声を入れながらやっていく、運用していくと。これも、今動き出したばかりのものです。

● これは、金沢市の条例を離れますが、市で整備した照明の例です。これは、美術館の後ろに、やはりこういう小道ができています。それから、用水沿いにぼんやりと、優しい灯りが差すような欄干を地中に仕込んでありますが、こういった照明の整備なども徐々に進めているところです。

● 最後に、民間からの取り組みです。社会実験の舞台になった広坂通りで、そのときに金沢工業大学とジョイントしてきっかけができたということで、以後、こういう月見行路という灯りのイベントが開かれるようになって、今年もありましたし、去年も行われました。金沢美術工芸大学とのジョイントでも、広坂通りではイベントができました。こういった創作的な灯りのオブジェを、広坂周辺で飾って、皆に楽しんでもらうというイベントが始まったところです。
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