金沢学会プロジェクト報告
四つの花道」― 美しい沿道景観形成に向けた動き ―
     

報告者:石川貴洋
 
よろしくお願いします。私からは、金沢学会から提案が出た二つのテーマの「四つの花道」と「金沢の夜景をデザインする」。「四つの花道」は水野一郎先生から、夜景は大内先生からご提案があったもので、それに関連するその後の動きについて報告させていただきます。(以下、スライド併用)

● それでは、まず「四つの花道」からいきます。どういう提案であったかということです。金沢の都心部です。ここは、歴史的にいろいろな時代の層が重なっているそうです。この図でいいますと、青い部分が重層性のある旧市街地ですが、実はこの青い部分を取り囲むように、主として戦後大きく広がっていった新市街地。これは、戦後の40〜50年の間にできてきたものですので、現代の層だけでできている町です。都心へ金沢の外からアプローチするときには、当然この赤い所を通ってアプローチしてくるわけですが、果たして美しい町並みなのか、風情ある金沢へ至る道としてふさわしいのかどうか、考えてみるべきではないかということがあったわけです。そこで、都心へのアプローチをする道を、舞台へ導く花道というふうに見立てて、美しいアプローチ路の形成を目指すべきではないかという提案でした。

● こういう都心と郊外といいますか、郊外の我々の時代に作ってきた町をどうするか。これは金沢だけではなく、日本の都市に共通する課題でもあるだろうと。それに金沢が進んで、何か取り組みをしていくべきではないかというご提案でありました。

● 郊外の道の景観といいますと、広告、看板類が乱雑に並んでいることが、特に目立つところであります。今ごらんいただいている図面ですけれど、これは金沢市の屋外広告物規制条例の規制図です。見ていただくと分かるように、ここが後ろになります。後ろから、旧北国街道ラインが大体こんなふうです。この旧北国街道よりも東側のエリア、町の背景の山も含めて、そういったところは色がついて規制がかかっています。これが北陸自動車道で金沢東インター、西インターで、ここが金沢駅で、駅から港へ延びる50m道路です。
 今は小松空港からお着きになると、インターを通って、こういうふうにアプローチしていきます。こちら側から来る方も、こういう具合に入ってくる。ちょうどアプローチする所というのは、ご覧の通り白地で、基本的には規制がない所という位置づけです。
 そこで、規制がないので、行政としてもなかなか手立てがないわけですが、早急に何かやっていく必要があると、金沢市でもお考えになっておりまして、モデル交差点を指定して、そこをまず一つのモデルに取り組みを始めようということをされてきたわけです。

● それが三つの交差点で、この3ヶ所です。こちら側の海側の方からのアプローチになる所の、ちょうど町の入り口に当たるような、ゲートになるような位置に、三つの交差点をモデル交差点に指定したわけです。

● どういうことをしたか。屋外広告物撤去モデル交差点ということですが、この写真にあるのは新神田、西インター大通りから入ってくる通りです。それから六枚、金石街道の交差点です。それから森山北、これは東インターからの交差点です。この三つを指定して、野立て看板の撤去を働きかけることをやりました。

● これが、新神田の交差点の以前の景観です。ここに、たくさんの看板類が立っています。それが、今は働きかけにより、看板を出しているかたがたが協力してきれいになったということです。このモデル交差点の取り組みを今進めていますが、後でご説明しますが、今後はさらに沿道景観形成条例というものを金沢市が制定されました。これにのっとって、さらに点から線の景観づくりに進んでいく予定ということです。

● モデル交差点の現況です。まず、これは新神田の交差点です。先ほどの、前のスライドにありました部分がここになります。今、4枚の写真は、交差点の四隅それぞれを1枚ずつ紹介しています。ここは今、コンビニエンスストアができるそうで工事中です。まだ、こういうふうに若干残っているものもあります。看板だけ外されて、これも下の段が外れていますが、フレームがまだ残ったりしているものもあります。そういった状況です。
 こちら側は、それぞれ野立て看板はない。モデル交差点は、こういう自家用看板については対象にしていません。

● 次に六枚の交差点、このホテルからほど近い所です。このビルの後ろ側が金沢駅になり、全日空ホテルがこちらにあります。この野立ての看板類はほぼ撤去が終わっておりますが、まだ名残が残っておりました。これが先日撤去されまして、フレームがなくなって、これが今の状況です。つい先日、一昨日の新聞に出ておりましたが、撤去がなりまして、看板の前の歩道の部分に街路樹が立ったということです。間もなく地元の方たちを交えた、撤去完了のセレモニーがあるということです。

● 森山北交差点、東インターからの動線になります。ここもまだ野立て看板というか、建物と物置がくっついたような形ですが、一部残っています。
○これが、拡大するとこうなるということです。野立て看板は、一部がまだ残っておりますが、撤去も進んできています。一方で、先ほども言いましたように、対象にならないお店の自分用の看板は、まだこのようにたくさんありますので、沿道の景観としては、このように見えているのが現状だということです。

● 先ほどご紹介した沿道景観の形成条例です。主要幹線道路、12m以上の道路を対象にして、美しい沿道景観の形成を総合的に進めるという一つの手立てとして、今年3月に金沢市が制定されました。どういうことをするかということですが、この幹線道路の沿道に沿道景観形成区域を指定すると。各区域に沿道景観形成基準、一つのモデルといいますか、こういうふうにありたいというものを定めて、景観形成を誘導していこうというものです。この区域に指定されますと、一定の要件以上の建築や開発行為といったものは事前に届け出て、その基準に照らして、適当かどうかをチェックすることになっています。そういうことによって、景観を誘導していこうというルールができたということです。
 こういうものは、新しいものから適用で、今あるものにはさわらないのが一般的ですが、金沢市の条例の場合には、ここにありますように「あまりにも何とかすべきではないか」というものについては、既存のものについても助言や指導、あるいは勧告といったことをして、「もう少し何とかなりませんか」という働きかけをしていくルールになっていることが一つの特徴です。
 現在、沿道景観形成の協議会が10月末に立ち上がっております。提案された水野先生が会長をされておりますが、そこで専門家や市民、さまざまな立場の方が集まって、今どこから取り掛かったらいいかとか、ふさわしい沿道景観、ここにあります基準作りに向けての議論を進めているところです。ここで方向を出して、モデル的に先行的に取り組む道路を決めて、徐々に取り組んでいる予定で、今動いています。
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