金沢学会02 ワークショップ報告 2
「大手門中通りの再生」河北門復元CG制作報告
     
報告者:米沢 寛、長谷川孝徳
     
●米沢:それでは、大手町中町通りの再生の報告をさせていただきます。
(以下、スライド併用)

○私どもが中町通りと言っているのは、赤い線の通りです。全長300m、突き当たりが国道157号線、いわゆる尾張町商店街の所ですが、尾張町商店街から大手門の階段がある所まで約4.8mの高低差があります。これは下からまっすぐ直線に見える通 りです。ご存じのとおり、金沢城公園、兼六園、右側に走っているのが浅野川、ここに主計町、鏡花記念館、そして東の回廊です。ご存じのとおり、この金沢城公園というのは、前田藩、明治時代は陸軍、戦後金沢大学と、県民、市民はここを通 れなかったわけです。金沢城公園が整備されまして、初めてこの中を抜けられるようになりました。これまでは観光客の皆さんも兼六園へ来られて石川門を少し見られてそこへ出て、またここの駐車場からバスに乗られて長町の武家屋敷に行くということが多かったのですが、本来の金沢のよさを分かっていただくには、この金沢城の石川門から入られて、ここの大手門を抜けられて、金沢の風情あふれる主計町、東へ行かれるのがいちばん金沢の風情を感じられると思いますが、何としてもこの通 りが非常に風情がない通りで、これをきちんとしたいということで、中町通りの再生の計画ということで、昨年の金沢学会で報告させていただきました。

○なぜ大手門中町通りの再生が必要かという話ですが、ご存じのとおり金沢城の表玄関の再生です。石川門が現存していますので、石川県民、金沢市民の多分半分近くが正門は石川門だと思っていらっしゃると思います。そういう意味では、大手門が本来の正門であるという史実を正しく伝えるということもありますし、何といっても前田家、徳川家、天皇家がこの門をくぐられたのです。もちろん参勤交代もすべてこの門を通 っており、ここから出発しております。また、先ほど申しましたとおり、金沢筋をめぐる回廊づくりも非常に大事だと思い、昨年金沢学会で提言させていただきました。

○大手門中町通りをめぐる動向ですが、幸い昨年の金沢学会のあと、金沢市がこの提言を受けていただきました。ここに、「有識者による懇話会と地元の町会長、住民のかたを入れた検討会」と書いてありますが、そのような推進委員会を作っていただいたのです。これは非常にいいことで、歴史的な話や有識者の話を懇話会でまとめ、それを推進委員会に流しました。このように、観光客だけではなく、住んでいらっしゃる町内のかたの感覚、この町で生きていらっしゃるかた、これからも生きていかれる生活者の意見も、一緒に反映させるということで進んでおります。
この懇話会は、2日前に第2回めが開かれました。この間にこの通りの交通量調査をしました。一日に約5700台の双方向の車両が通 行しておりますが、人は何と900人、自転車が400台。これは平日の統計ですが、この次は日曜日に調査をさせていただきたいと思っています。なぜ交通 量を測っているかというと、今、二車線の通りになっていますが、一方通行で一車線が可能かどうか。それによって歩道幅などがどうかとか、いろいろなストリートファニチャーが置けるとか、水路を確保するとか、いろいろなことがあります。また、歩道の道路名をどうするかということで今、交通 量を測らせていただいています。
もう一つは、大規模施設の移転が検討されています。この通り沿いにNHK金沢、これは450〜500坪あると思っておりますが、新聞紙上でごらんになったとおり今、移転の話が出ていますし、医師会館はすでに移転をしております。そういう意味では大きい土地が空くということと、この通 り沿いに民間の広い駐車場が幾つかあります。この大手門の再生計画が新聞上に載ってからその土地を持っていらっしゃるかた、また駐車場を持っていらっしゃるかたが、この計画に沿って自分の土地もグランドデザインができればそれに合わせてもいいというお話を頂いています。そういう意味では非常にいいグランドデザインができれば、町中でこれを進められるという気がしております。

○私どもが言っている大手門中町通りの町づくりの方向ですが、まず河北門の再建を挙げております。大手門中町通 りなのに、なぜ大手門ではなくて河北門かというお話があるかと思いますが、残念ながら大手門というのは1759年の宝暦の大火によって燃えて以降、何も作られておりません。できるだけ史実に忠実にという話になりましたが、そういう意味では全然資料がないわけです。ちょうど幸いに、その尾張町の通 り沿い、要するに国道から直線で大手門へ向かうその先に河北門がありまして、まさしく尾張町から河北門のいちばん上まで40m近い差があるので、ちょうどその周りに見えるわけです。あとでCGで再現してお見せしますが、そういう意味ではその河北門、要するにお城の形がその通 り沿いから見られれば、この通りは一転して風格が出る通りになるだろうということで、何とか河北門の再建をしたいということです。

○もう一つ沿道の景観形成と拠点施設づくりですが、今申しましたとおり市に懇話会を作っていただきました。そういう意味ではすでに無電柱化は決定しておりますし、今、路面 の素材等もやっています。そして、歩道の幅の広さ、水路、いろいろな計画があり、その内容についても今話し合われているところです。もう一つは、私ども経済同友会は、先ほど代表幹事が申しましたとおり、旧町名の復活ということをやっています。この辺りは梅本町、中町、殿町、大手町、非常にいい旧町名を持っています。それがすべてなくなっておりますが、それぞれ歴史を思わせるような町名ですので、それも地元住民の皆さんとお話しして、なるべく復活させようというお話し合いをさせていただいています。

○これは参考で、今この通りがありましたが、ここがNHKで、今移転するといわれている土地です。医師会がここです。ここもここもここも本当に今、駐車場がありまして、そこの住民のかたも一緒に動いてくれそうな雰囲気になっているということで、これを載せさせていただきました。
(以下、ビデオ併用)

○河北門は明治初期まで残っていましたので、そういう意味では写真も残っています。これは金沢工大の下川研究室にお作りいただきました。

○これは木を少し処理してあります。

○これはNHKの横から大手門を見上げたところです。今、電柱を消して、河北門がどのように見えるかということを現状で再現しております。これは尾張町側から見たもので、木を取ってありますが、昔お城というのは防御上、中には大きな木がなかったといわれておりますので、それを再現してみました。

○各地の事例に入りますが、その前に写真をお見せします。これは江戸時代の図面 なのですが、ここが大手門で、今ここがNHKですが、大変大きい部分が津田玄蕃という家老の屋敷だったわけです。反対側は前田対馬守の屋敷でした。当然武家屋敷なので、この通 りは土塀か木塀に囲まれた通りだったということが考えられます。そういう意味では、史実の雰囲気を再現しようと思うと、ここはやはり壁に囲まれた道かと思います。

○これが津田玄蕃邸の絵図ですが、これが大手門でここに水路が見えます。やはりこの塀がNHKの辺りまで続いていたたものだろうと思います。

○津田玄蕃邸跡は、覚えていらっしゃるかたもあると思いますが、今は兼六園公園管理事務所になっておりまして、ここから移築しております。そういう意味では、この大手門の中町通 りの再生には、これをもう一度移転するということも考えられるかと思っております。それでは、塀と道路の全国のいいイメージ図を流します。

○これは京都の高台寺です。なぜこれを出したかというと、今、路面もいろいろ検討課題になっておりますが、これが水路で石畳を敷いて段々になっており、ここに水が流れています。こういう処理をしてあるということです。

○これは伊勢の御祓い町です。少しイメージは違うのですが、塀の中にこういう町があってもいいのかなということも考えられるということで、出させていただきました。これが名古屋の武家屋敷跡なのですが、これが非常にいい参考になると思うのです。これは旧存する塀ですが、もちろん電線は処理されており、地中化になっております。素晴らしいのは、このマンションを建てられたかたが、前に現代風の塀をずっと作っていただいているということで、これはモダンの中の和風ですが、これもマンションの前の穴が開いているような塀でもいいかなと。これは古い塀とマンションとの対比ですが、そういうふうに地元のかたがそれぞれ古いものを残すか、また現代風に変えられて、塀を作られているという例です。

○これは輪島の長屋ですが、これも塀に囲まれた通りの塀の内側にいろいろな空き地ができますので、こういうような建物があって、いろいろな仕掛けができるのではと考え、ここに出させていただきました。

○先ほどの電柱を取った写真です。それに、今のまま塀を作らせていただきました。これはちょっと低い車目線ですが、こちらからこういうふうにお城が改めて塀に囲まれると、何となく風格のある通 りになるのではないかという気がしています。
(ビデオ終了)
今、検討会の中でも、どの時代をテーマにと検討したところ、やはり1800年代だろうと。もう一つは、史実に忠実という言葉がありますが、やはり現代のニーズも残していかなければいけない。そのバランスをどうしようかという討論をしております。少なくとも来年実質設計にかかりまして路面 上と地中化の工事は再来年には始まる。それに合わせ町のいろいろな話し合いをもっと進めて、皆さんのご協力を得ていい通 りにしたいと思っております。

  
トップページへ戻る