分科会A 「コンバージョンによる金沢の都心活性化」
     
松村秀一
木虎 徹
NYでは住宅転換に税制優遇 丸の内再開発は回遊性重視  
水野一郎  
都心部に金沢の良さ残す余地  
●水野:今日取り上げますコンバージョンというのは、用途変換、要するにオフィスビルを住宅に造り替えるとか、町屋を店舗に替えるということかと思います。少し具体的にするために、金沢の武蔵ケ辻の交差点から南町、香林坊の業務地域について、考えてみたいと思います。
松村 金沢のオフィスビルの空室率は二二%ほどだそうですが、ニューヨークでは、20数%あるいは30%ぐらいになっているところがありました。そうすると、だれが困るかというと、ビルのオーナーは経営が成り立たないので困ってくるわけですが、よりいっそう困ったのはニューヨーク市当局でした。元々、夜間人口がいないところで昼間人口まで減ってきた、つまり企業が出ていったために、どんどん税収が落ちてくるということがあります。
もう一つは、一方で昼間人口が減ってくると、犯罪が多発してきました。例えば放火事件がしょっちゅう発生し、そのたびに消防車が出る、あるいは強盗があって、そのためにその地域に警官を余計に配備しないといけないということで、収入が減って支出がどんどん増えていくという悪循環に入っていったわけです。
ニューヨーク市が何をしたかというと、オフィスを住宅に改造するのであれば、税制を優遇し、生活者を戻していこうというゾーンを決めたわけです。それによって、1995年から2000年までの6年の間に、ロワーマンハッタンエリアに存在しているすべてのオフィスの床面 積の総計の7%が住宅に変わったといわれています。日本について見ますと、オフィスから住宅にという限定的なコンバージョンに関しては、ここのところ動きが盛んです。例えば、補助金に関していうと、オフィスがコンバージョンされた住宅に対して補助金を出すという制度が、国の制度としてもう動き始めています。金沢でおやりになっているような自治体独自の補助金制度も、これを促進する一つの大きな動機づけになっていくと思います。

●水野:それでは、具体的に東京の丸の内界わいのコンバージョンを進めていらっしゃいました、木虎さんからお願いします。

●木虎:丸の内界わいでは、銀行店舗の統合とかいうことで町がだんだん寂れてくる、国際的に東京が世界の都市に対してかなり地位 が下がってきているのではないかということから、町の活性化を狙って手をつけたました。
昨年9月に新しい丸ビルができました。丸の内の中通りと申しますのは、大体長さが1.1キロほど、幅員が21メートルです。そこを具体的ににぎわいある町にしていき、町の新しい建物、丸ビルを建設しこれを一つのフラッグシップビルとしました。それから、全体の低層部分ににぎわいある施設を作り、町としての回遊性を図ることを考えたわけです。
中通りの環境なのですが、やはり通りそのものに手を加えて、それなりの雰囲気を出していかなければいけないのではないかということで、昔は車道もアスファルトの舗装でしたが、アルゼンチンの斑岩というものを利用し、石張りにしました。  ソフトといいますかにぎわいのための仕掛けは、ヘブンアーティストということで、大道芸人が中通 りでパフォーマンスを行うことなどを考えました。それから、新しい交流空間としまして丸の内カフェということで、自由に入っていただきインターネットもできたりコミュニケーションを図ったりする場所を、ビルの中に提供しております。それから、金沢にもこれに似た金沢ふらっとバスがあると聞いておりますか、丸の内界わいを周遊する無料バスを走らせたりしております。 

■システム的改造が課題
●水野:戦後、焼け跡闇市から、北は北海道から南は沖縄まで、ずっとビルを造ってきました。その膨大なビルがIT化や業界の縮小・再編ということで、かなり全国的に余ってくるはずです。それらをどう用途転換していくかが、日本の大きな課題になっているわけですから、その辺を法制、税制、補助を含めて、システム的に改造しないといけないですね。

■公共的意味含めた議論必要
●松村:そうですね。ただ、問題は、何で支援するのかということで、その理由がなければ、ただそのビルが空いていて困っているというだけでは、どこの国でもそんなことはやっていません。例えば、広場の在り方や緑などさまざまな生活支援施設、そういうものを出すのだったら、こういう補助があるということをやっています。  そういう公共的な意味合いというのを金沢なら金沢の中ではっきりと議論して、コンセンサスを得られれば、行政が自信を持って進めていけると思います。

●水野:金沢に対する提案がありましたら、お願いします。

●松村:コンバージョンに対し、単に補助金を出すだけではなく、こうやったら成立するではないですか、こういう人が住みますよ、町はこんなふうに将来なるのではないかというビジョンを検討して示すことが必要だと思います。

■全体をつなげる構想を
●木虎:もっと広く町をにぎわわせるという意味では、メインストリートに面 した所でも、オフィス系から物販系に変えていく、飲食とかそういったものが現実的で、それを単発でやっていくのではなくて、やはり全体をつなげていくことが大事だろうと思います。

●水野:金沢で、県庁が移転したことによって、金沢が受け入れるべき支店経済などの受け皿を、駅西に確保したと思っております。北陸新幹線が通 ったときに、富山、新潟、長野、福井を含めて、この辺の州都がどこになるかという動きが出ると思うのです。そのときに金沢の旧市街地は歴史を継続させるということにしておく、つまり、武蔵から南町、香林坊のコンバージョンというのは、もしかしたら1階、2階にもう一回金沢的なものが戻ってくる、あるいは、人のにぎわいが戻ってくる、情報交換する場が戻ってくる、そういう我々の都心を作っていくのだというプロジェクトに転換していければいいと思っております。

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