第8回金沢学会

金沢学会2016 >第1セッション

セッション1

■セッション1「金沢的MICE の推進」

●コーディネーター
大内 浩氏(芝浦工業大学名誉教授)
●パネリスト   
矢ケ崎 紀子氏(東洋大学国際観光学科准教授)
森本 福夫氏(株式会社イベントサービス社長)
中野 秀光氏(北陸スポーツ振興協議会株式会社社長)


金沢の魅力を活かすMICE とは

    

(大内)先ほど福光委員長から趣旨の説明がありましたが、少し加えさせていただきたいと思います。北陸新幹線の開業に伴うまではいろいろな努力があり、そして開業した途端にどっとたくさんの観光客の方がお見えになりました。てんやわんやの状況になったわけですが、それはある程度落ち着いたとまではいえなくても、逆に問題点がいろいろ分かってきました。現場の方たちは対応が本当に大変だと思いますが、これから一つ一つ解決策を見いだしていくところに来ていると思います。それから、2020 年の東京オリンピックに向けて、ご存じのとおり、オリンピックは必ずしもスポーツの祭典というだけではなくて、文化的なプログラムを同時に進めていくということがございます。2020 年のオリンピック・パラリンピックに向けて金沢も協力していこうということで、先ほどもご紹介がありましたけれども、金沢でも幾つか既に、文化庁長官に来ていただいたり、いろいろプログラムについてのセッティングができつつあるわけです。今、皆さんに見ていただきますのは金沢市の観光戦略プランで2016 年3 月に策定されたものです。お隣においでの矢ケ崎先生も外部委員として参加されているのですが、なかなか良くできている観光戦略プランだと思います。66 ページあり、これは皆さんも簡単にWeb 上で見ることもできます。
私も他の市町村の観光戦略を読む機会がありますが、非常に良くできている内容なのです。ただ、このセッションではさらに次のステップについて考えたいということです。具体的には何かというと、観光という意味では、やってくる観光客の多くの方たちにどう対応するのかというのがもちろんすごく大事で、それに対して観光戦略の中でも例えばさまざまな表示を観光客に分かりやすいようにしよう、あるいは観光客にもっと金沢の魅力に触れていただきたいということが書かれています。残念ながら今のところ、例えば近江町市場であるとか、ひがし茶屋街であるとか、金沢21 世紀美術館に少し集中し過ぎているのを、金沢にはもっとたくさんいろいろな魅力があるので、そちらの方にも関心を持っていただきたいということが具体的に盛り込まれているわけですが、今日はMICE について皆さんに考えていただきたいのです。
 観光戦略プランの総合テーマには、「四季折々、ほんものの日本を五感で発見できるまち」と挙げられていますが、なかなか良くできている表現だと思います。それから、七つの基本戦略が書かれています。いきなりそこについて述べたいと思いますが、35 ページに七つの基本戦略が挙げられています。
 七つの基本戦略とは何かというと、1 番目は「かがやく」という戦略で、「金沢の魅力あるコンテンツの創造」をしていく。伝統文化あるいは和の未来、食、この報告の中でもアンケート調査をすると、やはり金沢の皆さんは食に一番魅力を感じていらっしゃるということも書かれています。
 2 番目が「ひろげる」という戦略で、「海外誘客の推進」です。インバウンドといいますか、既に非常に多くの外国の方々が来られていますし、それもアジアだけでなく、遠い欧米諸国からも非常にたくさんの方に金沢の魅力を発見していただいているという意味では、他の観光地よりもずっと優れたところがあります。3 番目のMICE については後でお話しします。4 番目は「めぐる」という戦略で、「広域観光の推進」です。ストーリー性を持って、金沢だけでなく富山、あるいは新幹線の延伸ルートも決まったようですので、将来は福井あるいは京都等の関西との広域ルートも含めて考えよう。既に商流といいますか、高山辺りと白川郷等は大変な人気を博しているのですが、もっと広域的に観光を考えて推進策を考える。
 5 番目は「もてなす」という戦略で、「受入環境の整備」です。まだ個別にはいろいろと整備しなくてはいけないところがあります。それから人材の育成も大変ですし、情報発信と誘客の強化等が挙がっております。しかし、MICE等の推進については、市の方あるいは担当の先生方もいろいろご苦労いただいたと思いますが、ちょっと今日この後MICE についてお三方から議論いただく内容からすると、多分少し物足りないというか、もっと踏み込んで、先を見据えた推進策あるいは戦略があるはずだということを、このセッションでぜひ議論したいということです。それでは早速、矢ケ崎先生にバトンタッチしたいと思います。そもそもMICE は何かということから始まって、金沢らしいMICE をどのように考えたらいいかということについて、矢ケ崎先生からまずプレゼンテーションをお願いしたいと思います。ではよろしくお願いします。

(矢ケ崎) それでは口火を切らせていただきます。東洋大学の矢ケ崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私は「金沢らしいMICE の推進」というテーマにさせていただきまして、先生からは「金沢的」ということで、やはりこのあたりがキーワードになると思うのですが、MICE というものに関しても昨今、先に進んでいらっしゃる都市におきましては、単に会議を持ってくるということではなくて、会議を持ってきた後にどれぐらい自分の地域の強みにしていけるか、その持ってきた会議と受けた地域自体がどうすれば両方育っていけるのかというふうに、どこに帰結させるのかという戦略として考えている都市が増えてきました。そういう都市は金沢のライバルでもありますし、そういう環境も踏まえながらお話ししたいと思います。
(以下、スライド併用)
今日はMICE に関して深くご存じの方から、大体名前までという方までいらっしゃると思いますので、何かということについてはざっくり簡単にご説明した上で、市場規模などといった勘所についてお話を申し上げ、金沢市におけるMICE 振興はこういう方向がいいのではないかと私が普段つらつらと考えていることをご披露させていただきたいと思います。まず、ご承知のとおり、MICE はMeeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Event の頭文字を取ったものです。5 〜 6 年前まではMICE といっても誰にも分かってもらえないような状況が続きまして、ネズミの複数形で
はないかとかいろいろなことを言われたものですが、昨今MICE といいますと大体、「聞いたことはある」と言っていただく方が多くいらっしゃいます。
 ただ、日本において「M」「I」「C」「E」の中で統計をしっかり取れるのは、はっきり申し上げて「C(Convention)」ぐらいしかありません。ですので、実態がしっかり分かっていて、それを各地域が活用できるレベルまでのデータがあるかというと、「M(Meeting)」については企業が行うミーティングや打ち合わせから会議までと広く定義されておりますので、実際は日本ではよく分かりません。「日本では」と申し上げたのは、例えばアメリカ辺りでは、このミーティングをつかさどるミーティ
ングプランナーという専門職種が大企業には1 人ないし複数名おりまして、この者たちが業界を作って大体の市場動向を把握しておりますので分かるのですが、日本の場合はこういう職種がない。それから、「(I)Incentive Travel」は、よくできた営業マンたちを旅行で褒めてあげようという報奨旅行で、これは日本もかつて盛んでしたが、今はあまりないので、海外から大型のものを誘致するのが主流となってまいります。そして、今日のメーンになりますConvention(国際会議)、Exhibition/Event です。Exhibition の方がメーンですが、「見本市」と訳されることが多くあります。これも日本の見本市と海外の見本市は若干違っていまして、海外のExhibition は物や技術を見て、すぐ商談会ということになりまして、契約行為で商談が成立するという非常にビジネスとして役立つものですが、日本の場合は訳語が示しますとおり見本市で、見本をお見せして商談は後日というタイプのものがまだ多い状況です。
 MICE は、一般観光と異なる業務需要というふうに整理されますが、何がいいかといいますと、一般観光客が1 日に使う消費と比べて、数倍の消費を地域に落としてくれるということがまず一つ大変ありがたいことです。そして、何らかの国際会議、何らかのテーマを持った会議体として集まるわけで、一定程度の知識レベル、そして一定程度のものに対する関心、何かを良くしていこうという意欲といったものをお持ちの方々が集まります。そして、欧米豪の方もそうですが、1 人では来ずに奥さま、あるいはドイツの方に多いのですが、自分の跡継ぎである息子といった方々を伴って複数で来てもらうということ。そして、その開催場所に来たくて来ているわけではなく、この金沢の地のことをよく知らない方、金沢で国際会議があるから行こうとか、金沢に来たいから来ているのではなく、その会議がたまたま金沢で開かれるからお見えになったという方々が多くおられます。言葉は悪いのですが、開催都市に対してあらかじめ期待値がそんなに高くなかったけれども、来てみたら素晴らしいということでびっくりされるというギャップを狙っていける。ですので、仕事以外でご家族今日はMICE の中のC についてフォーカスしますが、Convention には今のところ日本では三つぐらいの定義があって、ちょっとややこしくなっています。共通しておりますのが、国際機関・団体が主催し、参加者が50 名以上ということです。A、B、C と記載していますが、A はICCA というコンベンションの国際団体のようなものがありまして、そこが一番厳しい定義をしています。定期開催かつ3 カ国以上で持ち回りの開催であるということですので、国連系の機関などが開いている総会といったものだと思います。一番分かりやすいところでいいますと、IMF 世銀総会が東京で数年前に大々的に行われました。開催地を「ワシントン、ワシントン、どこか」というふうに3 年に1 度ワシントンの外に出すというルールを持っています。そういった会議を誘致してくると、ICCA 定義でいうとカウント1 になります。B のUIA 定義は、これもコンベンションに関する国際団体ですが、やや民間的で緩く、ICCA よりも厳密ではないところがあるNPO の定義ですが、これは3 カ国以上の参加で開催は1 日以上であればいいというふうに、少し緩くなっています。
 最後のC のJNTO 定義は、日本政府観光局(JNTO)といって、日本の観光庁の外郭団体のようなプロモーション部隊がおりますが、その日本政府観光局の定義では国家機関・国内団体の主催も可であり、3 カ国とは言っているけれど日本も含めていいことになっていて、地方都市での開催状況も分かるような定義となっています。3 つの定義が走っていますが、これからご紹介させていただくデータに関しましては、ICCA の定義を使って、国際比較ができるデータとして見ることが多いです。このICCA の定義を使って市場規模を見てみますと、国際会議は近年増加傾向にありますが、ICCA 定義という厳しい定義であっても全世界で1 万2000 件ほど開催されています。世界全体で開かれる1 万1000 〜 1 万2000 件ぐらいの会議の内訳ですが、参加者数50 〜 499 の小中規模の開催件数が8 割を占めている状況です。ですので、先生から以前、金沢における会議のデータを頂いたのですが、単純に割り算しましても、学会でいうと300 人弱の規模で開催されていらっしゃいますし、その他の会議や大会で割り算しますと、400 〜 500 名の会議件数が多いので、世界のマスの部分はしっかり狙っていけるだけのものは既にあるのではないかということが分かると思います。そして分野でいいますと、医学、工学・建築、科学の分野で5 割ということでございますので、このあたりがマスとしては狙い目のテーマになっております。この中で日本の開催件は、アジアで今のところ1 位なのですが、ひたひたと中国が追ってきています。非常に僅差でアジアの1、2 を競っている状況にあります。そして、中国ですが、会議を運
営するビジネス体Professional Congress Organizer(PCO)という会議の運営自体請け負う専門のプロフェッショナル集団の会社ですけど、こういったところがあまり多くなかった。土地は広いので施設はあるのだけど、運営が不十分なところがありましたが、昨今はここに非常に優秀なドイツ勢が入ってきましたので、非常にライバルとしても厳しいものが出てまいりました。国際会議を開催できる都市が多いことが実は日本の特徴です。他の国に行きますと、首都と幾つかの都市でしか国際会議が開催することができない状況が多いですが、こと日本に関しましては、国際会議を開催できる都市というと、20 〜 30 は簡単に手を挙げるのではないかというぐらい多いです。
 今申し上げましたことを簡単にデータで振り返らせていただきますと、世界における国際会議の開催件数は12000 件で、トップは米国、そしてドイツ、英国、スペインと欧米勢が上位を占めておりますが、わが日本は7 位に入っています。そしてオランダを挟みまして9 位に中国が上がってきていまして、厳しいICCA 統計の定義であっても、中国とわが日本の差は40 件〜 50 件のところまで来てしまっている状況です。そして、同じアジア・大洋州という大きなエリアの中では、中国、韓国に続きましてオーストラリアが入っています。シドニーを徹底的に強くしようとしているオーストラリアも、競合相手となる場合が大変多くあります。オペラハウスの素敵なところです。もっとよくしようとオープンを待っております。こういう状況です。今申し上げましたアジア大洋州に中東を加えて、一つのリージョナルとしてデータを見るのですけど、開催件数を都市別に見ますとシンガポールが1 位です。都市国家ですので、ここがどうしても1 位になります。都市別に見ますと、ソウル、香港、バンコクと続きまして、7 位にやっと東京が80 件で入っております。このアジアリージョナル7 位の東京ですが、都市の世界順位でいうと28 位になります。
 国内ではどれくらいの順番で来ているのかということですが、右の表を見ていただきますと、トップの東京が80 件です。そして京都、福岡、大阪と続きまして10 位につくばが入っておりますけれど、このあたりは同点順位までを含めても9 件以上の開催で、1桁開催まで入れますと、本当に日本は国際会議を開催できる都市が多くあります。これをライバルが多いので不利と見るのか、あるいは役割分担等をしながらもっと大きなパイを取っていけると見るのかということ自体は、戦略の考え方ではないかと思います。それから、参加人数としましては500 人未満が多いことはこのグラフで見ていただきましたとおりで、500 人未満が8 割を占めています。それから、分野別の割合としましては、4 〜 5 割を医学、工学・建築、科学という理系・工学系の部分で占めております。昨今、国際会議を誘致するときに、以前よりポイントが少し動いてきているのではないかと言われてきております。国際会議の誘致は、大体3 〜 5 年、長いもので7 年ほどの期間をかけて誘致合戦を戦い抜きます。ですので、長い場合は7 年ぐらい前に約束したことを、7 年たってしっかり約束どおりにできなければなりません。それだけMICE としての足腰があって、MICE に本気で取り組む都市でなければ、しっかり約束をしていけないところがありますので、MICE 戦略は必要であり、先々のことを扱うということです。誘致をしていくポイントとしては、なぜ金沢で開催しなければいけないのかが厳しく問われます。なぜなんだと何度も問われます。アクセスや会議施設や宿泊の状況、それから地域との親和性をしっかり説明できることが必要になってきます。そして、国際会議の主催者にどんなメリットがあるのか、オーガナイザー(主催者)側に会員が増えるとか、この国際会議をすることによって、非営利団体が主催だったとしてもどのくらいの収益が手手元に残るのか、そして支援はどれくらい得られるのかということを厳しく見られるようになっています。また、参加者へのメリットとして、普段味わえないユニークベニューでの経験、エクスカーション、そしてテクニカルビジット、同伴者へのプログラムの充実、そして観光もできるのかというところが見られますし、また、金沢開催がいいのだということを有力な方に推薦していただくアンバサダーといった方々の力も大変強くなってきています。
 最近の動きとしましては、観光ができるというだけでは会議は来ない。観光地というだけで、物見遊山だけでは会議はそこで開催されないということです。地域に集積している産業、文化、芸術、要するに歴史と文化と技術とどれぐらい親和性があって、それが故に関心を持つ方々が多くいる地域で会員が増え、ユニークべニューやエクスカーションといったものも会議が終わって全くかけ離れたテーマのところにぽんと行って遊ぶのではなく、会議の中身をより深める形で、話し合ったことを実際にビジネスとしてやっている場を地元の企業へ見に行き、もっともっと知識や経験を深めていくのだという方向のメリットが重要視されるようになってきました。
 今申し上げましたことを整理したスライドがこれですが、会議のテーマをより深くし、せっかく集まるのだからとことん知識、経験を深めてみたいという思いに対し、地場の地域はどれぐらい貢献できるのかというところが求められてきております。結果、観光や単なるエクスカーションよりも、テクニカルサイトビジット、その会議のテーマにふさわしい企業群あるいは集積があって、実際に現場を見に行って深めるようなビジットが好まれるようになってきました。そして一方、これは金沢にとって考えどころではあるのですが、オールインワンという開催がセキュリティ上、好まれるようになってきました。1 カ所で全てが大丈夫ということです。日本でいいますと、オールインワンで最も魅力がありますのはパシフィコ横浜です。あそこは全て1 カ所で、宿泊も会議も飲食も大体のことが終わりますし、閉じられた空間ですので、大変警備しやすい。そして、パシフィコ横浜の向かいには会議体があるときの神奈川県警の事務所、おまわりさんが集まる所があります。そして隣に総合病院があったりします。徒歩圏内です。このようなところが強いのですが、これは交渉の余地があるところではないかと思います。
 オールインワンで日本で一番魅力のあるパシフィコ横浜に年間4000 件のオファーが来て、そのうちの2000 件がパシフィコ横浜で開催できるものであり、その中から選んで開催しているということです。4000 件のオファーのうち、2000 件はどこに行っているのだろうか。金沢で開催したらもっといいものがたくさんあるのでないだろうかということです。そして、非営利組織が主催であっても、がりがりもうけるよりは収益が赤字にならないことが重視されております。
特に米国の会議を招聘する際にはPCO という専門職の力が大変強いので、特に宿泊や交通を高いレートで取らないように、価格交渉をシビアにやってきます。間に旅行会社を挟んだりしません。直接交渉でかけてくることがありますので、この金沢の地でも宿泊の皆さん方は一致団結して交渉力をつけることがこの先必要になってくるということがあります。また、お話をちょっと変えまして、誘致型ではなく、自ら情報発信する国際会議も忘れてはならない分野であると思います。典型的なのが、シンガポールで行われている「シンガポール国際水週間・水エキスポ(SIWW)」です。かつてシンガポールでは非常に水不足で、隣のマレーシアから水を買っていました。マレーシアとけんかするたびに「水を売ってやらない」という大変な切り札を切られていたわけですが、日本が持っている水技術、透過膜だと思いますが、海水を真水に換える技術の支援を受けて、シンガポールが長年の懸念である水不足を克服しています。そのプロセスの中で、たくさんの技術、たくさんの知見をためましたので、水に関することならシンガポールというような国際会議を作り上げて、今では毎回世界115 カ国、2 万人ぐらいの方々、1000 社以上の出店がある国際会議に仕立て上げいます。こういったタイプのことが、きっと金沢の地でできるはずではないか、いやできるはずだと思っている次第であります。最後になりますが、金沢におけるMICE 振興ということで、今まで申し上げてきたように金沢の地場産業、伝統技術、そして「金沢かがやきブランド」ということでたくさんの製品が認定されていますが、こういったものが育っていくような国際会議、win-win の国際会議を目指していくのがいいかなと考える次第であります。一つは誘致型であって構わないと思いますが、誘致型であっても街中開催といった金沢らしいやり方を追求し、オールインワンではない街中開催だけれども素晴らしい開催ができる金沢モデルを作り上げて世界に発信していけるのではないかと考えております。また、シンガポールの例で申し上げました「自らつくる情報発信型会議」は、残念ながらICCA 定義では1 カウントにはなりませんが、大変重要な会議だと思います。これに、関連するビジネスのテーマを持った海外企業の報奨旅行(インセンティブ・ツアー)などをうまく組み合わせることによって、非常に情報発信力を強化していけるのではないか。そしてこういった会議を誘致してくださる方々と一緒に、テクニカルサイトビジットや同伴者プログラムも効くと思います。一緒にいらっしゃる奥さまが「来てみたけど、金沢はちょっとね」となると旦那さんは二度といらっしゃらないので、同伴者にいかに満足していただくかというのは大変重要ですので、こういったプログラムも必要かと思います。分散型につきましては、一つ例示できるとしたら2012 年に福岡市で国際泌尿器科学会という、参加国94、参加者3000 名強の、泌尿器科学界で最も権威のある国際学会が開催されました。場所は海縁にある福岡国際会議場です。中洲川端駅から海に向かって15 分ほど歩いた所にあります。
 理事長・会長招宴は、太宰府の九州国立博物館のエントランスをユニークベニューとして開放しました。懇親会は何と商店街を借り切って開放しまして、「SIU Night」を開催しました。商店街の開放が非常に誘致の最後の決め手になって、福岡でぜひ開催したいという投票が集まったと聞いております。
 このように、街中を縦横無尽に使いながらの開催は前例があることです。こういったことを実現するためにも、国際会議の候補リストの作成といった営業データベースの作成は金沢でお済みでしょうか。あるいはJNTO、ICCA、それから国内外で活躍するPCO とのネットワークの強化はお済みでしょうか。MICE アンバサダーは金沢にたくさんいらっしゃると思うのですが、組織化はお済みでしょうか。国際会議のトラベルマートへの参加がないと始まりませんが、主要な所のアメリカやフランクフルト、シンガポールは行っていらっしゃいますでしょうか。そして、人材育成や語学力を含めた交渉力の強化といったものが総合的に必要なのではないかと思います。少し長くなって申し訳ございません。私からの最初のプレゼンテーションとさせていただきます。ありがとうございました(拍手)。

(大内) ありがとうございました。トップバッターとして、一般的に私たちが想像する観光客の誘致、あるいは観光客の方たちへの対応とはかなり違う話でした。3 年から場合によっては長いもので7 年の準備期間があって、その間をずっとフォローしていくお話もあったように、多分この会場にいらっしゃる皆さんにとっては、今までの一般的な観光客の誘致とは違うことをお分かりいただけたのではないかと思います。続いて、既に1981 年にイベントサービスという会社を立ち上げられて、最近はアウトバウンドといって海外に行く方の支援もされているようですが、主にインバウンドを中心に大変な実績をお持ちの森本福夫さんから事例をたくさんご紹介いただけるようですので、今の矢ケ崎先生のお話をもっと膨らませていけるのではないかと思います。森本さんの方からぜひご紹介いただきたいと思います。

(森本) 皆さん、こんにちは。今ご紹介いただきましたイベントサービスという会社を、ビジネスとして35年ほどやっております。これは日本の企業がインセンティブで海外へ行って海外でイベントを行う、あるいは海外からインバウンドで団体が来て、そのイベントを国内で行うのが大体の仕事です。今回はインバウンドのMICEのセミナーですので、そのことについて多少お話ししたいと思っております。
(以下、スライド併用)
 このスライドは2013年9月ですから3年ぐらい前、今はやってらっしゃるかどうかよく分かりませんが、金沢のMICE推進協議会の方が約20名ほど、ちょうど新幹線開通もあって、恐らくMICEを推進されようと思われたのでしょう。千葉のシェラトンで、1泊2日で講演やセミナーや体験をやったときに、MICE関係の雑誌に出した記録です。
 この後、2015年3月に新幹線が開通しました。私は少し勉強しようと思いまして、市の観光政策課に電話して聞いたところ、2014年、つまり新幹線の開通以前は金沢の入り込みが850万人だったそうです。これは日本人の方、海外のインバウンドの方も含めてでしょう。そして、2015年にどうなりましたかと伺ったところ、1000万人だそうです。前年に比べて150万人増えたことになります。関心を持ったのは、今回このセミナーはMICEのインバウンドですから、その中でどの程度の外国人、インバウンドのビジター、観光もそうですしMICEもそうですが、どれぐらいいらっしゃるものなのだろうかということを聞いてみました。例えば兼六園の入場者数で分かるそうで、30万人だというお話でした。それから、市の方は25万人ぐらいというお話でした。ということは、多めに見積もって1000万人中、3%が実はMICEになります。今日、私がお話ししているMICEの実情というのは、実は少ないパーセントであるということがいえると思うのです。
 つまり、一般観光のビジターが非常に多い。そこで、市ではどういう数を目標としてやってらっしゃるのかということを伺ったところ、2020年の目標は40万人だそうです。それは一般の観光およびMICEも含めてのビジターですから、パーセントでいうと現状では非常に少ないマーケットの話をしているというのが私の認識です。
 先ほど先生もおっしゃいましたので、MICEの説明は避けたいと思いますが、私はこのMeeting、Incenrive、Convention、Exhibitionの中の「I」であるIncentiveに特化した仕事をしています。これも先ほど先生がおっしゃいましたけど、今日お越しの方々は詳しいと思うのですが、通常MICEといってもなかなか分かりにくいので、例えば官公庁やJNTOのホームページに大体こういう説明が出ております。ご覧になったとおりです。
 この一番下、つまりビジネスイベントというものをひっくるめて、観光ではないビジネスイベントの総称ということなのですが、「展示会」「イベント」という説明がよくあるのです。実はこれに対して、私はちょっと違和感を持っております。「展示会」は分かるのですが、イベントというと、例えばインセンティブ旅行のイベントやコンベンションはイベントではないのかと思うかもしれませんが、実はイベントなわけです。
 なぜそのような違和感を持ったかといいますと、これはあまり愉快な写真ではありませんが、いわゆる9.11です。貿易センターに飛行機が突っ込んで爆発したときの写真です。たまたま私は以前、ここの前にあるヒルトンホテルに下見で行っておりまして、その1カ月後に起こったのです。その翌日のニューヨークタイムズを見ると、見出しがありまして、「September 11 Event」という表現なのです。イベントというと、われわれは楽しいものや愉快なものがイベントという感覚ですが、向こうの捉え方ではイベントというのは出来事、起こったことなのだということになります。そうすると、先ほどの表現は変えた方がいいのではないか。
 MICEというビジネスイベントの他に、例えばオリンピックのようなスポーツイベント、先生がおっしゃったようなイベントというものを、MICE以外と表現した方が多分正しいだろうと思いまして、私の提案ですけど「MICEプラス」という表現にすると一番誤解がないと思っている次第です。ちょっと横道に最初からそれましたけど。
 インセンティブは国際会議やコンベンションなどと違って、なかなか一般的に分かりにくいのではないですか。インセンティブ旅行、インセンティブイベントとは一体どういうことをしているのだろうかということが非常に分かりにくいと思うのですが、インセンティブは褒賞、ご褒美ということです。企業はその目的を達するために、褒賞を出します。つまり褒美があるとわれわれ人間は頑張りますから、それを使って企業の目的を達成しようとする。
 そのことをインセンティブアイズと表現するのですが、一番企業がインセンティブを使うのは、売り上げを伸ばして利益を上げる、つまりセールスにインセンティブを使うというのが一番大きい動機です。その他に例えば、どうもうちの会社は提案制度をやっているけど提案の数が少ないな、この率をもうちょっと上げたいなということで何か褒賞を出してコンテストみたいなことをやる、というようなノーセールスインセンティブに使われるのがほとんどです。
 その褒美を三大褒賞とわれわれは言っていますが、褒美を大きく分けますと、一つは現金、キャッシュです。車をこれだけ売ったから、これだけの褒賞を現金であげるよという褒美です。もう一つは、物です。良い成績を上げたから4Kテレビをあげましょうというようなことです。もう一つは、これがインセンティブ旅行とそれに伴うイベントということになるわけですから、お話ししているMICEというのは三つ目の褒賞としての旅行のインセンティブに絡むものであるといえると思います。
 分かりやすくご説明しますと、車の販売会社があって、レクサスを何千台売ろうという目標を立てた。それを売る営業マンに、「これだけの車を売りなさい。そうすると、こういう褒賞があるよ」ということをよく分からせる。セールスコンテストがスタートしまして、途中飛ばしますが、セールスコンテストが終わりました。そうすると、左側の目標の達成と評価で、「君はこれだけ売って何パーセント達成した」と。そこで褒美、褒賞をあげなければならない。つまり、成果の還元ですからMICEのインセンティブの場合には、金沢へ旅行に招待することになるわけです。この循環が毎回セールスコンテストのパターンで行われていくことになります。

 そうすると、一般の観光旅行、いわゆる観光ツアーで来られる方とインセンティブツアーはどう違うのだろうというお話ですけれど、観光、食事、買い物というのが一般的な観光ツアーですね。インセンティブになりますと、皆さん一生懸命に車を売ってくれたのですから、主催者である企業は最大に報いて喜んでもらって感謝を示して、また次のコンテストでも頑張ろうというふうに返さなければいけないことになります。つまり、いい内容のものでないと、せっかく頑張って金沢に来たのに、褒美の旅行やイベントがこんなものなのかとなると、次のコンテストのときに「頑張ったってあんなものなのか」とあまり感激しないのです。ですから、いいものをいろいろやるわけですけれど、それは旅行そのもの以外にたくさんありますけれど、こういう要素の楕円形の部分が、普通の観光旅行ではあまりやらない部分ということになるわけです。
 赤で丸をしてある部分がありますが、ほとんどのインセンティブ旅行の場合は、表彰式があります。例えば21世紀美術館で行うとか、しいのき迎賓館で行うとか、よかったねということで表彰します。それから、お祝いの会ですから表彰パーティーがあるわけです。この二つがほとんどの場合、インセンティブ旅行で行われる二大イベントになります。
 もう一つはチームビルディングですが、後ほど説明しますけれども、この表彰式や表彰パーティーはどんなことなのかというと、私は去年たまたま1100人ほどの大型の表彰式、表彰パーティーを千葉県でやりました。観光庁がそれを見まして、これを日本に誘致する宣伝ビデオを作りたいということで協力しまして、ビデオができました。約2分弱です。ご覧ください。

―映像―

 表彰式や表彰パーティーの例をご覧いただいたわけですが、その他に先ほどお話ししたチームビルディングというものがあります。例えば団体が150名来ますと、150名を10名ずつ15のグループに分けて、そのグループ同士でいろいろなことをさせて、成果を競って、誰が一番だったか、どのチームが一番だったかというのを競います。部屋で何か物を作ることもありますし、まちに出ていろいろな謎解き、ミッションを完成していくのが大変ポピュラーです。これはまちに出ていって行ったケースですが、例えば東京タワーも普通のエレベーターで上るのではなく、外階段で六百何段上らせるとか、速さを競うとか、あるいは「自分たちのグループらしい写真を撮りなさい」とか、もし金沢でしたら、私は分かりませんけれど能楽堂もありますから、有名な能の「隅田川」があるので、どういうストーリーなのかを調べてこいということで一生懸命調べに行くとか、いろいろなことがあると思いますが、これをチームビルディングと言っています。
 日本へ来るわけですから、大体日本に来てラスベガス風のパーティーをしてくれとか、中国風のパーティーをしてくれということはないです。どうしてもポピュラーなのが和風ということになります。だから、和のテーマは非常に喜ばれます。左は和のテーマの場合です。私たちはこういういろいろな物も作って持っています。五重塔とか、大仏とか、いろいろなものがあります。それから幕があります。背景幕ですが、そういった物を使って、和風のエンタテイメントを入れて全体を請け負う仕事です。
 その中でも、先生が先ほどおっしゃったように、ユニークベニューとして川端の例が出ましたけど、同じように非常にユニークなベニューがやはり誘致するための一つの武器にもなる。私も実は2〜3週間前に日帰りで、少し歩こうと思ってこちらに参りました。21世紀美術館に行ったり、しいのき迎賓館に行ったり、その他主計町などほうぼう歩きまして、いい所がいっぱいあるなあと思ってきたわけですけども。
 左側が和風としては一番ポピュラーなテーマで、和風はどちらかというと伝統的なテーマですから、右側はもうちょっと新しいものとなってくると、例えば今アニメで「君の名は。」が大変ヒットしているようですけど、アニメとか、コスプレとか、そういうテーマが人気二大テーマとなります。
 今日は金沢的なインセンティブ旅行、イベントということですが、私は京都でも札幌でも大阪でも東京でもいろんな所でやっておりますけど、例えば京都と金沢を何となく気持ちの上で比較すると、率直なところ、金沢を京都のようにしてはいけないなあというところがあります。つまり、金沢としては、あまり大きな団体、例えば1000人とか数千人の大きな団体・グループ、予算の少ないグループを販売の対象として狙うのはいけないのではないかと僕は思っているわけです。それはホテルのキャパシティの問題もありますけど、あまり予算の少ない人たちが大量に来ると、どうしてもまちを荒らしてしまうことをとても心配しているわけです。京都に比べて金沢の持っている上品さというのでしょうか、格調の高さを維持していただきたいと強く思っています。

 そういうことで、先ほどの場合は1100名でしたし、私どもは来月また1800名の大型イベントを大阪のインテックスというコンベンションセンターでやります。それは保険のセールスの人たちですが、やはり人数が多いですから、個人的な予算としてはとても少ない。そうなってくると、本当にやりたくて、質が良くて、利益もそれなりに見込める、つまり付加価値の高い団体にはならないのです。今後、MICE特にインセンティブを金沢がセールスしようという場合にどうあるべきかというと、私の考えではインセンティブでも上級クラスのインセンティブを狙う。つまり末端のインセンティブではなく、マネジャークラス、経営者クラスです。一言で言うと富裕層とよくいいますが。インセンティブは褒賞として会社が提供するものですから、あまり大きくない数で、上級クラスのインセンティブグループを販売対象にするべきだというのが私の考えです。大型を追わないと思っております。
 商品というとちょっと語弊があるかもしれませんが、販売商品としてどういうものを売っていったらいいかというのは、まだ私どもはよく研究していませんので分かりません。金沢らしくなくてはいけないというのはよく分かります。コンテンツは今後の問題になりますけれども、金沢らしいコンテンツというものにしていかなければならないと思っていると同時に、ここが大事なのですが、付加価値の高いものにしよう。付加価値が高いということは、平たく言うと利益が見込めるということです。過当競争になったり、数を追ったりしないということですから、それが実は個人としての単価、扱い単価が高く、先ほども先生がおっしゃったように一般観光に比べて相当のお金を落としていくわけですから、付加価値の高いものにする。従って、量より質になるということで、量は追わない。金沢らしく、先ほどおっしゃったような質のいいものを商品として提供していくことがよろしいと思います。
 これに関連して、ハードです。先ほど、建物をお建てになる話も出て、大変いいことだなと思いましたけれど、そういうハード、会場となるものの準備ができたとすると、先ほどのようなインセンティブの旅行やイベントなどを良い内容で提案できるプランナーたち、Destination Management Company(DMC)と言っていますが、一言でいうと非常に能力のある旅行会社というのでしょうか、そういうソフトの部分の養成が必要となってくるなと実は思っているわけです。
 これは余談ですけれど、私はどうして金沢というのだろうと興味を持ちまして、ネットで調べてみたのです。そうしましたところ、農夫の方のところにお嫁さんが来て、お嫁さんが持参金を随分お持ちになって来たのだそうですけど、それを使い込んでしまった。ある日、庭を掘ってみると、金塊がザクザク出てきたそうです。泥にまみれていますから、それをどこか川で洗ったそうです。つまり沢ですね。それで金沢になったというようなことが書いてありました。
 インセンティブは、目標に挑戦して達成して、「やった」という、幸せムードというかエッセンスですから、そうすると金沢の「金」とか、百万石というイメージとか、金箔とか、能の宝生の「宝」などというのは、とても金沢らしいなと思いまして、言うなれば高級インセンティブとしてのいわば聖地としての売り方があるのではないかと思った次第です。ちょっと時間がオーバーしましたので、これで失礼いたします。どうもありがとうございました。

(大内) ありがとうございました。今まで皆さんが思っているところとは違うところに大きなマーケットがあるということをご紹介いただいたと思います。次に中野さんにプレゼンをお願いしたいのですが、ご存じのように、金沢武士団(サムライズ)のオーナーでいらっしゃいます。ちょっと今までとは違うスポーツのイメージをお話しくださると思います。よろしくお願いします。

(中野) あらためまして皆さん、こんにちは。私はこの7月にこちらにお声を掛けていただき、就任したばかりの新参者でございます。私のような者にこのような機会を頂きましたことを心より感謝申し上げます。立派な話はできませんが、実際に私がいろいろ経験させていただいたことを今日お伝えするだけの説明になると思います。
 実は私の基になるものはJリーグ、サッカーでした。後ほどその辺のことを紹介しますが、何といっても先日ちょっと涙が出たのは、ツエーゲン金沢さんに勝っていただいたことです。米沢さん、今日はいらっしゃいますけど、僕はアルビレックス新潟というところで徹底的に指導を受けました。当時J2だったのですが、毎回4万3000人のお客さまが入っておりました。それをよく勉強しろと池田会長に言われ、バスケットも毎回5000人以上入れなさいと言われ、後ほどその映像をお見せしますが、おかげさまで5000人、毎回コンスタントに入れるようになりました。
 その後、いろんな機会を頂いてbjリーグというリーグを作り、今回、川淵三郎さんのおかげで統合にやっとたどり着きました。今日お話しすることは、後ほど実例やスライドをお見せしながらスポーツ庁のスタジアム・アリーナ改革指針を交えながらご説明させていただき、これが金沢のお役に立てれば幸いだと思っております。
 これから日本のスポーツ界に国も力を入れるときに、どのような方向に向かおうとしているのか。スポーツ庁の未来改革会議で随分議論してまいりまして、指針を出しました。この中で特に国が目指す方向にスポーツ産業ビジョンの策定に向けたことがございます。この課題の1番目が、スタジアム・アリーナの在り方です。次いで、スポーツコンテンツホルダーの強化、新ビジネス創出の促進、スポーツ人材の育成、他産業との融合による新たなビジネス創出、そしてスポーツ参加人口の拡大と続きます。
 文化豊かなこのまちでスポーツがどのような役割になれるのか非常に期待しているところですが、私としてはこれからお話しすることが、もし金沢でマッチングするのであれば幸せだなあと思います。私はアリーナ競技ですので、今までも全国の会場建設に携わってきましたが、本日はそちらを中心にお話と映像をお見せしたいと思います。
 特に石川県の競技レベル、国体の順位の高さはご存じでしょうか。私は新潟県出身で6年間、国体の準備委員会として県の方にいたのですが、北信越で断トツなのが石川県です。今日は米沢さんもいらっしゃいますし、ミリオンスターズさんもいますが、実はこれがプロスポーツに観客が入らない理由になります。後ほどお伝えします。
 私は川淵さんに1997年、「静岡に視察に行って来い」と言われて行きました。そのとき非常に衝撃的なことがありましたので、それも後ほどお伝えします。新潟が毎回J2で4万人、バスケットで5000人も入るようになったことの真逆のことをしたからです。
 これからお話しする「官民戦略プロジェクト10」は皆さんお聞きになったことがあるでしょうか。いわゆる成長戦略として「日本再興戦略2016」の実現というものが発表されました。GDPを500兆円から600兆円に100兆円上げるという話です。このカテゴリーの中で、既に金沢はスポーツ以外で観光立国の地方都市に選ばれています。国は8兆円のGDPを15兆円に上げようとしています。
 そんな中でもう一つ、この金沢で面白いことをやっていらっしゃる方がいたので、よく調べてみました。実は私がなぜ金沢に球団を作りたかったかというと、融合の可能性を非常に秘めていたからです。ご存じでしょうか。第4次産業革命を実現するものとして、IoT、ビックデータがあります。今日も社長がいらっしゃっていますが、AIやロボット分野で2020年までに付加価値30兆円を目指すとあります。3月にIoTの最新情報と活動事例セミナーが金沢で開催されております。また、非常に興味深いのですが、金沢大学がビックデータを地域活性化に生かす人材を育てる狙いで、カリキュラムに導入して、何と全国初の講義をされている。これも発想がまた非常に面白いと思います。
 そういったカテゴリーの中で、スポーツ分野では成長産業をテーマにしたスポーツ施設の魅力、収益性の向上、スポーツとIT、健康、観光、そしてファッションの融合を目指して、現在の5.5兆円の産業シェアを2025年までに15兆円を目指すことになっています。
 幾つかのカテゴリーで金沢に可能性を感じているのは、私だけではありません。スポーツ庁の由良幹事官も先日金沢入りして、「私と同感です」とおっしゃっていました。今、私は鈴木長官の下にいまして、長官とこの間もお話ししたのですが、特に文化と観光のコラボ、スポーツツーリズムの視点から将来性を感じておられました。
 また、金沢武士団のホームゲームでは、本当に異例なのですが、われわれのリーグの理事長が毎回金沢の大会を訪れています。日本バスケット界の新たな可能性を感じるとおっしゃっております。実際、私がbjリーグの社長時代、全国にこれを設立することが主な仕事だったのですが、金沢を回って感じたことをお話ししますと、特にスマートベニュー、複合機能を組み合わせる考え方に、実情に合わせてみますと全国の地方都市で一番可能性が高いことに気付きました。
 私が24チームの中で初めてオファーを出したのが、実はこの金沢です。その複合的な機能の視点から見ますと、AIといわれているものです。例えばプロ選手はAIを使っていろんな選手のフォームを改善することができます。また女子バスケットのWJBLというのがありますが、そのチームでは既にそういったことを採用しています。また私のチームのサッカー、野球のアマチュアスポーツにも生かせますし、またこの分野を活用しますと、プロ野球のスカウティングにも活用できます。自分のチームに最も不足しているポジションの選手をこれで探し出すことができます。それから、年俸の設定の目安にもなるといわれています。例えば、入団した選手が自分のチームに合っているかどうかも分かってしまうのです。既に外国の強豪チームでは採用しています。例えば負けが込んで、その負けの法則が出たら理由を分析して、メンバー構成や練習に取り入れることまでできるということです。これはプロ選手だけではなくて、一般の選手や愛好家にも利用されますし、トレーニングに役立って、けがの防止につながります。生涯スポーツを楽しむ健康な身体づくりとして一般市民の方にも活用できるといわれています。
 この成長戦略のカテゴリーの中には、最先端の中で健康立国があるのです。この分野こそ、これから大切なまちづくりの中心になるべきだと私は思っています。そして、健康産業につなげて若者の雇用につなげたり、プロスポーツ選手のノウハウを活用したり、大きな医療を未病につなげ、大病にならないための医療費に使える時代になってほしいと思っています。
 これから少し映像を見ていただきます。先ほどお話ししたスポーツツーリズムの中で、秋田県は能代工業のバスケットで大変有名な県ではありますが、ここはどちらかというと「見る」スポーツではなかったのです。どちらかというと、「する」スポーツです。この「する」スポーツで県民が大移動した映像をお見せしますので、ご覧ください。

―映像開始―

(中野) これは、有明コロシアムというテニスコートです。これはスマホで撮っているので縦型で見えづらいですが、ピンクの部分は約5000人の方が新幹線を乗り継いでやってきています。会場は超満員、1万1000人が入っています。これはバスケットの会場です。ここの人たちはアウェーになるとこぞって出掛けます。相手のチームよりも人数が多いといわれています。いわゆる「見るスポーツ」から「語るスポーツ」になったといわれているのです。ここが大きなポイントになってくるのではないでしょうか。
 この喜びをよくご覧ください。お孫さんと一緒に来ているお客さんも非常に多いです。おじいちゃん、おばあちゃんにしてみると、孫と同じ趣味で語れることほど幸せなことはないと思います。

―映像終了―

 そして、実際にアリーナを造った場合、私はアメリカからNBAをふるさと小千谷に呼んだことがあるのですが、NBAの仲間に確認したところ、試合会場の大体70%がコンサートに使われています。そういうふうにスポーツだけではなく、どちらかというと国際会議やミュージカルなどもしないとなかなかうまくいかない。
(以下、スライド併用)
 稼働率を上げるにはそれがとても重要だということで、アメリカの使い方をご覧になってください。皆さんもご存じのとおり、これはアメリカの試合会場です。バスケットコートが真ん中にあります。これが満杯になった状態です。われわれも黄色のユニフォームなので、金沢が将来こんなふうになっていただけたらうれしいです。
 これは、何だと思いますか。これは試合会場で国際会議ができるようになってます。もちろんここではコンサートも開けるような造りになっています。恐らくこれからのスタジアムはこういったものになるでしょう。
 これはプロレスをやっています。
 これは私が新潟時代に、オーナーである池田会長にお願いして、どうしてもビジネスとして成り立つには5000席が欲しいということで、スタンドをコンベンションホールに買っていただきました。おかげさまで、試合の大体2時間ぐらい前には4000人以上の方が大宴会をしております。地元の商店街の方には一切お金を取らずに、もうけてもらう。まず、まちが元気にならないと意味がないということでやりました。
これがきっかけで隣の長岡市へ突然、森市長に呼ばれました。現在アルビレックスグループはサッカー、バスケなど13のプロスポーツをやっておりまして、全て黒字化に成功しているのですが、ぜひ一つ長岡に移籍にできないかということで、こちらの場所をお願いしました。それも駅前です。新幹線でそのまま入れる所です。ここに5000人が入って、いつも満杯になっています。新幹線を降りて約3分でアリーナに入ります。ここは市役所もありますので、ほとんど年中無休の市民課をここに持ってきていただきました。おかげさまで駅前のシャッターは全て開きました。人の通りは相当増えています。
 右側はタニタ食堂の谷田君と作ったTANITA CAFEです。40席しかないのですが、年間4万人の方に来ていただいています。
 J2の頃のアルビレックスの模様です。J1ではありません。これをどうやって入れたかというと、伝説といわれているのですが、お孫さんと一緒に試合会場に来たら無償で入れますというところから始まったのです。おじいちゃんは孫と一緒に肩を組んでジャンプできるものですから、とにかくうれしくてしょうがなかったという映像です。
 続きまして、こういったものが実際に金沢でどういうふうにリンクできるかというのが今後の話なのですが、もう一つビデオを見ていただけますか。まずは今日、大内先生から。

(大内) 実はNHKさんにお願いして提供していただいています。ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、10月の中頃に教育テレビで放映されたものをトリミングしました。

(中野) よろしくお願いします。

(大内) アオーレ長岡と仙台です。

―映像開始―

(中野) 向こうが外なのですね。ここの稼働率は今90%です。365日のうち90%が使用されています。これは全面開けられるようになっています。入口は24時間開いていて、いつでも入場できます。例えば中学生がここで試合をしていると、全面わざと開けます。すると、一般人の方が見てくれます。子どもたちは人に見られると非常に頑張りますね
 この渡り廊下は私が提案させていただきました。雨雪に一切当たらず入れます。これは寝ていられません。

(大内) これは駅前の表通りです。

(中野) 猪俣さんと一緒に計画を練って、今、駅前の推進委員の仕事をさせていただいています。

―映像終了―

 それでもう一つ、今の駅のコンコース、新幹線の改札口からそのまま入れるという映像もお見せしたいと思います。

―映像開始―

 これは新幹線、JRのところから歩いています。私がいた頃、男女のプロ球団を作ったのですが、このままお客さんは一切雨雪に当たらず、新幹線の駅からアリーナに向かいます。
 これはスカイデッキといわれているものです。
 これから対反対側のところに映像を移動します。ここですね。今度は長岡駅を映した状態から、市役所の市民課の方に向かって歩いています。これは日曜でもやっていますので、合併した遠い所のおばあちゃんが電車に乗ってきて、降りてすぐそのまま市民課に行けることを考えています。
 もう少し入っていきますと、左側のガラス張りの下が、市の職員の働いている場所なのですが、これも「寝てられない」と言っていました。ここでお弁当を食べたりもしなければいけないのですが、「まちに出て食べなさい」ということで食堂を作らないでくださいました。
 これは古い映像なのですが、全てチームカラーのオレンジに染まっています。隈研吾さんが設計された建物です。ちょうどこの日は試合がありましたので、このまま試合会場に入らせていただきます。
 隣はホテルが隣接していますので、アウェーから来たお客さまや選手たちはここに泊まって、ほとんど移動時間なく、相手チームも試合会場に入れます。実はもともと新潟市にいたアルビレックスですが、現在、選手は全員長岡に移住して、ここで生活しています。
 ここから試合会場に入っていきます。もちろん土足です。アルコールもOKです。地域の方はここから1円も取りません。とにかく地域、駅前がもうからないといけないので。これはちょっと古いですが、今はもっと広くなってお客さんがたくさん入っています。このときはまだ4000人弱だったと思います。私ども金沢武士団は平均1000人ちょっとしか入っておりませんので、その4〜5倍入るわけです。
 皆さん、バスケットボールで1万人以上は入るわけがないというふうに随分言われてきました。この映像を見ていただきたいのですが。
 このとき、恐らく日本バスケット史上初めてだと思います。1万4000人を超えました。このときが一番チーム数が増えていきます。オールスターのときでしたが、おらがまちでもバスケットをやったらお客さんが来てくれるのではないかと思われた方が全国に増えました。こちらの会場は、結構コンサートを多くやっていらっしゃると聞いております。
 これから私たちスポーツチームというのは、経営体として集客力を高めて、行政の皆さまをパートナーとして、スタジアムやアリーナの使用方法について具体的な話をしたり、協力するとともに、地域にもたらす公的な効果を説明していく必要があると思っています。それをやるためにはどうしてもプロジェクトの上流段階で必要なこととして、顧客の要求から仕様を決定していく市場調査をしなければならないと思います。特に、金沢の人たちがそういったことを望んでいるのかどうかということは、今後とても必要になってくるのではないかと思っています。
 今までのプロスポーツはどちらかというと、人口の多いところにプロ野球など作ってきましたけど、これからはわれわれのような地方でもしっかりとした競技ができるようなものにしていきたいと思っております。
 最後にどうしても皆さんにお伝えしたいことがありますので、あと1〜2分で終わりたいと思います。私事で恐縮ですが、1996年、4万人のふるさとにNBAを招致したことがあり、1万円のチケットを6000枚売らなければならなくなったことがあります。商工会議所の方からは当時、地元の商店街にジャンボジェット機を着陸させるより無理だと言われ、市長が「夢をかなえよう」と言って僕の背中を押してくださったことで、おかげさまでチケットは完売しました。
 翌年、地元の高校生がインターハイで優勝してくれました。その地域のおかげで、その後、新潟アルビレックスというチームに誘っていただいたのですが、そのときに、先ほどお見せしましたが、コンベンションホールの朱鷺メッセに毎回5000人を集めなければビジネスとして成り立たないことに気付きました。新潟県内の方たちにお話ししたときには、絶対5000人は入らないと言われたのですが、おかげさまで105%を超えるお客さまに来ていただけるようになりました。
 この金沢という地域は、皆さんもご存じのとおり、小中のレベルが全国トップです。この子たちが今年初めて国体で準優勝したのですが、ほとんど地元の子どもたちだけです。対戦した京都のチームは黒人も外国人もいましたし、県外人が非常にいたのですが、本当にこの石川県の土壌に私は魅力を感じております。
 今日、米沢さんがいらっしゃいますが、できればバスケットだけでなく、一緒にサッカー、野球、バスケ、バレーボールもありますし、ハンドボールもあります。そういった方たちと一緒に、この地域を盛り上げていけたら本当に幸せだなあと思っております。
最後に、この可能性を皆さんと考えて、やはり金沢ですので、アリーナを造るのではなく、どちらかというと劇場のようなところで試合をしてみたいなと思っております。簡単ではありますけど、私の方からは。

(大内) ありがとうございました。

(中野) ありがとうございました。

(福光) 先ほど概要説明のときにお話ししましたが、金沢経済同友会の提案として金沢市役所の方に、本多町にある歌劇座の辺りを全部使って建て替えをして、コンベンションホールにしたらどうかということで、われわれ創造都市会議として絵にしてみました。浦さん、説明お願いします。

(浦) いろいろ課題はあるかと思うのですが、例えばアオーレ長岡のような施設を本多町の歌劇座のところに造ったらどうかということで絵を書いてみましたので、ご覧ください。
(以下、スライド使用)

 アオーレ長岡です。先ほどおっしゃっていたように、コンベンション機能に市役所の機能、それから大きな天蓋がありまして、こういう所でいろんな市民活動が行われています。ご説明にありましたように隈研吾さんの設計で、今は国立競技場を造っておりますし、富山ではガラス美術館が彼の設計で建っております。
 こういう施設で、見にくいですけど、3階の右側の赤いところから新幹線に直接接続します。アリーナは茶色の部分になります。大変大きな建物です。
 これを金沢歌劇座に落とし込むとどうかということです。右側が現在移転予定の石川県立図書館、それから北陸放送がございます。上側に金沢21世紀美術館が見えます。敷地は金沢歌劇座と、あくまで仮にですけれど、金沢ふるさと異人館とその横の駐車場の青く囲まれたところまでを敷地と仮定してみました。赤い線は建築的なことなのですが、いろいろな地域分けのラインです。このような敷地背景です。
 そこにコンベンションホールと国際会議場の小さなものをつけると、大体こんな感じのボリューム感になります。コンベンションホールの大きい四角のところは、先ほどのアオーレ長岡と同じくらいのものです。
 ちょっと見にくいのですが、アリーナと国際会議場ということで、中野さんから先ほどご指摘があったのですが、少し会場の改修がなされたみたいで、3400席というのはあくまで備え付けの席で、ホームページを確認しましたら、持ち運び可能な席を入れると大体シアター形式で4400人、先ほどのプロレスなどの場合は最大5300人、大体5000人が入るホールだということです。
 上から見るとこんな感じです。屋上緑化を市松でやったらどうかということで、1階の面積は大体21世紀美術館より少し小さいぐらいになります。先ほどの数字的なことを説明しますと、今のコンベンションホール、国際会議場に地下駐車場がどれぐらい要るか分かりませんが、地下1階を全部駐車場とすると、大体2万m2をちょっと切るぐらいです。21世紀美術館が駐車場も含めて大体2万2000m2ぐらいだったと思いますので、それより少し小ぶりです。
 これは向かい側から見た絵ですが、金沢らしさということで木の格子のイメージを使っています。外観は今あるものと相当変わったイメージになると思います。
 右側がいわゆるシアター形式で、これで大体5000人のイメージかなと思います。
 こういう形で椅子が出てきます。
 これが国際会議場の使用例です。これぐらいのボリューム感で、国際会議としては非常に小さなものです。
 大変簡単ですが、もしアオーレを入れてみたら、ということで入れてみました。多分課題となるのは交通の問題です。街中は今でも21世紀美術館は混んでおりますので、今議論されている公共交通と併せて考えることは必要かなと思います。以上です。ありがとうございました。

(福光) ありがとうございました。あくまでも金沢市が持っている地面の中で、そこがいいかもしれないという例ですので、参考にお話ししました。

(大内) それではぜひ少しやりとりしたいと思うのですが、最初の矢ケ崎先生のセッションでは、皆さんがお考えになっている一般的な観光とはだいぶイメージの違うMICEの本質をお分かりいただけたのではないかと思います。さらに森本さんに具体例にしていただいて、最終的に金沢が目指すところは皆さん同意していただけるのではないかと思います。とにかくたくさんの人を呼び込むというよりも、クオリティが高く、質のいいMICEに金沢が特化していって、そこで金沢は勝負していったらいいという提案を頂いたと思います。
 そして中野さんからは、スポーツ施設というと、どちらかというと郊外の少し離れた所に巨大な駐車場を持ったりして、普段スポーツが行われないときは本当に閑散としているようなスポーツ施設を、いわゆる教育施設として作った時代がありましたが、明らかにそういう時代とはもう違う。スポーツももちろんやるし、さらにそれ以外のコンベンション、MICEの会場にもなるし、音楽等々のイベントとしても使う。つまり、都市中心型の施設として考えていくと、これは将来の金沢にとってもいい資産になって、そして金沢の皆さん、あるいは外からいらっしゃる皆さんにも魅力的なものにもなるという形でお話があったと思います。
 明日、また市長を交えて議論しますけれど、矢ケ崎先生は明日おいでになれないので、せっかくですから森本さんと中野さんのプレゼンに対して少しご感想でも結構ですから、何か一言いただければ幸いです。

(矢ケ崎) ありがとうございます。明日授業があるので、申し訳ございません。私のゼミ生が卒論提出を間際に控えているので、申し訳ございません。
 お二方のお話を拝聴して、やはり金沢という地でMICEという可能性はすごくあるなということを再確認しました。コンベンションの関係者とお話をさせていただきますと、昼間は本音をあまり言わないのですが、夜になると、「金沢は可能性あるよね」「これからのMICEを実現する土地なのに」と言います。すみません、言葉を選ばずに申し上げますと、「もっと頑張れるよね」「もっとやれるよね」という言葉を聞くことがすごく多いです。これはいろいろな階層の方からお聞きします。それが具体的に何なのか、森本さんと中野さんから示していただいたように思います。先生からもありましたけれど、金沢が目指すべき方向の一つとして、ターゲットは上に持って、目線を上げたターゲットをちゃんと選ぶのだと、森本さんのお話にもありました。
 インセンティブにつきましては、最近規模の大きいものが話題になってきまして、例えば昨年でしたか、一昨年でしたか、パリのルーブル博物館を中国のインセンティブが6000人で1日借り切りました。ルーブルを借り切ったということに、「わー」と思いました。恐らくそういう形のMICEというよりは、おっしゃっていた取締役、マネジャークラス、ディレクタークラスといった方々の質の高いものを受け入れていくことだろうと思います。また、MICEで使える施設はこの金沢の地に幾つもありますが、今パースで見せていただきましたようなものができてくると、すごく使い勝手のいい組み合わせがいのある施設群になってくるのではないかと大変感慨深く思いました。
 それと、一般観光客にとっても、MICEで来てくださった方々にとっても、共通して日本の弱さとして言われているところなのですが、夜が弱い。単に私が大好きな「飲み歩く」という夜だけではなく、中野さんからご紹介がありましたように、上質なスポーツ、上質なイベントを一緒に楽しんで見ることです。コンサートでもスポーツでもそういうものはありです。文化・芸術・スポーツの関連で、上質な夜を楽しく過ごす、そして開催時間が多少工夫されていて、ご飯も食べるし、そういう楽しみもあるし、その後ちょっと飲みにも行けるような3層構造がしっかりできるような時間帯設定です。
 東京でもコンサートたくさん開催されていますけど、6時や6時半からのコンサートに行きますと、その後に食事も何もほとんどできないですよね。消費と消費をぶつけてしまっていて、どちらかを殺しているような状況が起きています。そういったものを全て解決しているようなものが必要です。しっかり眠っていただかなければならないのですが、24時間朝から晩まで金沢でしっかり楽しんでいただきながら、納得してお金をしっかり落としていっていただくような、素晴らしい仕掛けができそうな気がしました。
 最後に一言なのですが、施設もできて、全体としてMICEの四つ全てを一つの都市でマネジメントしていける都市はめったにないのです。MICE全体を都市経営としてやっていける可能性がお二人のお話からとても出てきたと思いました。ありがとうございました。

(大内) ぜひそれは明日、市長にも私からお伝えし、お願いしてきますし、そういう人材もきちんと育てていかないと、せっかく知恵があっても生きないのではないかと思います。どちらからでも結構ですが、一言補足がもしあれば。

(森本) 今おっしゃったように、やはり上のクラスということをお話ししたのですが、上のクラス、上質なインセンティブのイベントツアーが必要だろうと思うのです。ですから、行政である県や市、あるいはビューローなどが、海外での都市の宣伝のためのインセンティブのトレードショーがあるのですが、そういう場合にキーワードとしては、金沢はハイエンドの客を目指していると。客と言うと語弊がありますが、ハイエンドのインセンティブツアーを目指している。質もハイエンドで、決して安くないということを宣伝することによって、いわゆる大量あるいは安い団体を排除するようなプロモーションが必要だろうと思っております。以上です。

(大内) ありがとうございます。中野さん、どうぞ。

(中野) ありがとうございます。森本さんから「団体で来るのではなく個人で」とありましたが、これは非常に重要なポイントで、私も観客動員をするとき、「団体さんのバスケットチーム、皆さんで来てください」というのはなるべく避けて、やはり個々に来ていただいて、家族ぐるみや恋人同士で来ていただくようにしています。
 矢ケ崎さんからも言っていただいたのですが、実はアウェーから来て「試合を見に来たらとてもいい所だったから、今度は家族を連れて金沢に来た」という方がいました。全くそのとおりで、非常に参考になりました。
 それと試合の終わり時間です。実は私どもは土曜日の夜にやっているので、今度昼間にしようかなと思いました。終わった後、まちに繰り出していただけるように、そこは本当に工夫していきたいと大変参考になりました。
 最後に一言、言い忘れたことがあります。静岡に行って感じたことです。スポーツをすることにお金を掛けているチームはチケットを買って見に来れない。つまり、強化にお金が行ってしまっている。ですから、その競技をやっていない方にたくさん見に来ていただけるような環境づくりが必要だということを教えていただいたことがあります。まとまりがなくて大変失礼しました。ありがとうございました。

(大内) そろそろ簡単なまとめに入りたいと思いますが、お三方の議論を聞いていて、私は海外のボストンで生活していたのですが、例えばボストンですと、レッドソックスというベースボールもあれば、バスケでいうとセルティックスという有名なチームがあり、ブルーウィンズというアイスホッケーのチームがいずれも市内にあります。そういう所に見に行ったり楽しんだりするときに、例えば昼間スーツを着て仕事をしている人が、いったん家に帰ってシャワーを浴びて着替えて出てくる。あるいは、私などはパリなどで劇場に観劇に行くときもそうです。外国のお客さんたちで、例えば海外から来る少し質の高いお客さんなどに東京でいろんな接待をするとき、特に女性はそうですけれど、夕方の時間もう一度着替えて、全て整えて、夜の服装に着替えてから夜に来られる時間を2時間ぐらい取って差し上げないと怒られるということを、私はよく経験しました。
 だから、金沢の方たちにもそのことを前から私は申し上げていて、一部やってくださっていることもあるのですが、昼間ビジネスを終えられたらいったん自宅にお帰りになって、シャワーを浴びて、夜はスポーツならスポーツでいいですし、観劇なら観劇、コンサートならコンサートでもいいですけど、もう一度その姿に着替え直して楽しんで、さらに夜にお食事に行かれるのもいいし、アルコールをたしなむのもいいです。そういう都市の楽しみ方は、実はこの規模の都市だったらできるのです。
 しかし、東京では実はできないのですね。つまり、いったん家に帰るなどというと往復2時間、場合によってはそれ以上かかりますので、とてもシャワーを浴びている人などいない。先ほど裏で中野さんとお話ししていたら、バスケットボールで女性がおしゃれをして来られるそうです。その話をちょっとしていただけますか。

(中野) あるとき、秋田で試合をしたときに、雪国ですからどうしても長靴で来ます。そうすると、女性がオーバーと長靴を脱いでハイヒールに履き替えて、ぱっと着替えるのです。外は雪国ですので寒いのですが、会場の中はとてもおしゃれな空間になり、私どもの試合会場は6割ぐらいが女性ですから、男性もそのおかげで増えて来て、会場はいつも超満員です。大変おしゃれで、非常に礼儀正しい試合会場になっています。

(大内) そうですね。そういうイメージでスポーツイベントなりアリーナを捉えるのも大事ではないかと思います。時間が参ってきたのですが、今回お三方から、私たちが今まで想像していなかったいろいろなことについてご指摘いただきました。
 先ほど福光委員長から、このシンポジウム全体のテーマ「金沢ネクスト・ステージ」ということで、新幹線後、さらには東京オリンピック・パラリンピックを目指してというお話もありましたが、私はもっと先のことを考えなければいけないと思います。創造都市であり、あるいは文化立国をしていく金沢なのですから、それに向けて、場合によっては次の100年、あるいは加賀百万石は400年の文化の中で培われたわけですから、ひょっとすると次の400年のことまで考えて、私たちはこのまちにさまざまな投資をしていかないといけないとつくづく感じたわけです。
 というわけで、このセッションを閉じさせていただきたいと思います。また明日、議論させていただきたいと思います。ありがとうございました。







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第一日目  12月8日

第二日目  12月9日

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