第6回金沢学会

金沢学会2012 >基調スピーチ

ワークショップ報告

■テーマ『遊楽都』

ワークショップ中間報告

 

 

金沢創造都市会議実行委員
金沢経済同友会ワークショップ推進委員長
半田隆彦氏


金澤町家リノベーション特区について

 今回、最初にご報告させていただきますのは金澤町家リノベーション特区についてです。2012年3月に、町家を旅館にということで、重伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区)の規制緩和がなされました。普通なら旅館に必要な帳場がなくても旅館として営業できることになり、現在、金沢でも2〜3軒、東山や主計町に町家を改装した旅館的なものがありますが、それは旅館というよりも貸屋というような営業形態です。
宿泊しようとする者との面接に適する玄関、帳場、その他これに類する設備が規制緩和になったわけですが、ただ条件が、地域的に重要伝統的建造物群保存地区内にあること、伝統的建造物群を構成している建造物であることされています。この重伝建地区内だけで認められているものを、金沢市が認めている重要文化的景観地区も対象にしたいということで特区の提案申請をしており、多分、来年4、5月以降に認定されるという運びになっております。金沢市でも、来年度は金澤町家情報館を設けて、町家の有効利用を図ろうというようにも聞いております。 赤で囲まれた部分が重要文化的景観選定区域、ピンクで囲まれたところが文化的景観区域となっており、この中でも町家を旅館として使えるようにしようという特区申請を、金沢市からしているということです。
 金澤町家旅館管理オフィスを別のところに置いて、それぞれの町家を1号室、2号室という形で運営して、市内に残っている金澤町家の有効利用を図っていこう、または図っていけるのではないかということです。11月19日の北國総研のレポートにもありましたが、2012年1月1日現在、金沢市内には町家は7,900軒あり、その中で空き町家が592軒残っているそうです。金沢市もこれを改装、または有効利用することに対し、最大で500万円の補助金を出しています。ただし、大体古い家が多いので、1軒当たり修繕費用が800〜1000万円はかかるだろうというレポートが出ております。そういった費用がかさむこともあって、有効利用がなかなか進んでいないのも現状です。

 玄関帳場を代替する機能を有すればという形になっていますが、これは通信設備やビデオカメラで監視ができます。それから、管理事務所で鍵の引き渡し、または宿泊名簿を作るなどの運用基準が満たされれば、帳場がなくても一軒一軒の町家が旅館として営業ができるという内容です。


長期滞在型ツーリズム

 続きまして、長期滞在型ツーリズムの開発です。これも発表するに当たりましていろいろ調べてみましたが、なかなか簡単なわけにはいかないことが分かってまいりました。観光スキームはかなり変化しており、団体から個人、見物から体験、消費から投資、発地型から着地型という流れであることは承知の話ですし、2012年版の観光白書に出ておりましたが、1人当たりの宿泊数などがだんだん下がってきているのも現状です。宿泊、旅行の目的も、約半数が名所・旧跡の見物や温泉での宿泊というデータも出ています。
 金沢市の場合、駅や施設にたくさんのパンフレットが出ていて、それぞれはなかなかよくできています。それから、金沢市の観光パンフレットも散策コースなど、いろいろなコースの紹介がありますが、なかなかそれが周知されていない、どこに行けば置いてあるのかも分からないといった状況です。
 現在、クラフトツーリズムの提案はかなり進んでおり、金沢市の観光協会のホームページでは、16のモデルコース、半日コースなど、いろいろなコースがたくさん紹介されています。手描き友禅八掛付き無地染きもの制作コースは2泊3日で10万円、加賀刺繍のショール制作コースは2泊3日で3万円など、クラフトツーリズム的なものもホームページに載っています。
 また、何でも体験プログラムということで、いろいろな文化、食などを体験しようというコースもたくさん載っています。ただし、受け入れ可能施設、店舗の紹介をしているだけで、ホームページ上からは申し込みできないことになっておりまして、本当にうまく機能しているのかどうか、なかなか検証もできないような状況です。

 いろいろなコンテンツがあると思いますが、単なる一日観光だけで終わらせない、長期滞在型、宿泊型のツーリズムを目指したコンテンツの再編集が必要だろうと思います。テーマとすれば、金沢学やクラフト、芸事。北國文化センターでやっている横笛教室は、3カ月6回の講習ですが、1週間滞在してある程度芸事を習得するというコースにもなり得るのではないかと思っております。
 それからイベント型では、季節イベント、音楽イベント、アートイベントなど、いろいろあると思います。季節イベントとしては、食も関係しておりますが、1985年からフードピア金沢を毎年開催しております。それから音楽イベントですと2008年からラ・フォル・ジュルネ金沢、金沢JAZZ STREETは4〜5年たっています。それから、国内外の著名な講師陣の指導による世界レベルの若手音楽家の育成と地域音楽文化の振興を目的に、いしかわミュージックアカデミーを17回やっていますが、こういうものがオールジャパン、またはインターナショナル化すれば、金沢での長期滞在も増えるのではないかと思っております。

 それから、金沢には近郊を含めますと、12の大学と4つの短期大学があります。こういった施設、講師陣の活用。専門学校もたくさんございます。その中でも料理、お菓子、スイーツ等、食に関した専門学校での短期講習も素材になるのではないかと思っております。
 それからいわゆるMICE。これは行政を含めて誘致していますが、実績とすればかなり右肩上がりになってきておりまして、2010年には31の国際会議が開かれています。
※MICEは(M)Meeting、(I)Incentive、(C)Convention、(E)Exhibitionの頭文字
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 送り出す方(アウトバウンド)はビジネスになるのですが、受け入れる方(インバウンド)はなかなか利益が出しにくく、ビジネスにならないということも旅行業者の方にの方からお聞きしています。
 平成19年に観光庁の方で、インバウンドビジネスということで、地域の観光資源を熟知した地元の中小旅行業者による旅行商品を作る、主催する、運営するというものが規制緩和になりました。第3種旅行業者ということですが、以下の要件を満たす企画旅行の造成、実施が可能になったということで、催行地域の限定、事業所のある周辺、石川県なら石川県内のツアーを企画、運営、募集ができるというように規制が緩和になっています。ただし、旅行代金は当日払い。申込金を取ろうとしても20%以内で、開始日より前の旅行代金の収受を行わないことが規則としているわけですが、オプショナルツアー的なものならばできるのではないかと思っております。
 それと営業保証金300万円、基準資産額300万円で参入が可能ということで、平成19年以降、いろいろなところで第3種旅行業が幾つかできてきているということです。地域の観光資源を熟知した地元の観光協会、またはNPO、観光事業者などが第3種旅行業を取得し、旅行商品の開発、募集、催行等を積極的に実施すれば、地域に密着したインバウンド型、または長期滞在型のツーリズムを発展させていくことができるのではないかと思います。したがって、例えば観光協会がホームページで紹介するだけでなく、観光協会自らが第3種旅行業者を取得し、そこでコースを作って募集するということも可能だと思っております。全国で約60団体が第3種旅行業を取得済みということで、調べたところでは北陸では氷見市観光協会も第3種旅行業を取得して、独自にツアーやインバウンド型の旅行商品を開発しています。金沢市においても何らかの形でツアーの企画、募集をしていくことが、長期滞在型のツーリズムが根ざす一つの要因になるのではないかと思っております。私からの報告は以上です。ありがとうございました(拍手) 。

 

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第一日目  12月6日

第二日目  12月7日

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