第3部 課題2 「活性化の仕掛け」
     
金沢経済同友会・都市活性化委員長
半田隆彦
   


「行政の取り組み状況について」
 

(半田) 金沢経済同友会の半田です。それでは、行政の取り組みについて、少しプレゼンさせていただきます。
(スライド併用)

●初めのスライドは、中心市街地にかかわる行政の主な計画・条例ということです。左側が金沢市、右側が石川県で、ここ10年の間に出てきました構想、基本計画、条例等を抜き出してあります。一見して分かるのは、県のものが実は非常に少ないのです。もちろん金沢市のことは金沢市、石川県の広域のことは石川県という区切りで、石川県に「都心地区整備構想」と書いてありますが、実は都心地区というのは県庁跡地、金沢城址公園、それから附属学校跡地のことを指して、都心地区整備構想という県の構想になっています。
 金沢市のほうは、これをご覧になって分かるように、非常にいろいろなものをやっております。いちばん初めに来ているのは「金沢市世界都市構想」ということで、この辺の基本コンセプトに従って、整合性を持っていろいろなことをやっていると理解しております。98年には「都市計画マスタープラン」「金沢市中心市街地活性化基本計画」と。これをずっとやってきまして、今年、「新金沢市中心市街地活性化基本計画」ということで、これは何年間かで終了することになっています。
 それからここにまちなか定住とオフィスコンバージョンを含めて、2001年には「金沢市まちなか定住促進条例」ということで、最後に補助金、助成金の話をしますが、この辺から金沢市のほうで非常にまちなかの定住、それからオフィスの流出に危機感を感じて、施策を打っているということだと思います。
 石川県は、それほど中心市街地で計画等はないのですが、先ほどちょっとお話に出ましたが、金沢都心地区の「灯の回廊」基本計画がスタートしております。また、今年、「石川県都市計画マスタープラン」策定ということで、これがスタートしております。また、今、話題になっています「県庁移転跡地等検討懇話会」、これは懇話会という位置づけで、ここで決定されたことがどのように反映されるのか、何とも分からない部分ですが、これが提言を行っております。

●これが都心地区といった形で金沢城跡地、県庁跡地、附属学校跡地、広坂の部分ですが、これに関する行政の主な動きです。この都心地区整備基本構想策定連絡会議が金沢市と石川県の間で設けられておりまして、お互いに委員を出して、この跡地に関しては一体的に検討していこうということで、97年にこういったものができてスタートしているわけですが、基本的には金沢城址公園と県庁跡地は県が担当する。それから、附属学校の跡地は金沢市がやるということを取り決めて、一体的に整合性を持って整備していこうという取り決めがあっただけのような感じもします。
 市のほうは、このときに附属学校跡地ということで、この21世紀美術館の基本構想策定、それからアートアベニュー広坂芸術村基本計画の策定と来ておりまして、広坂に関しては2004年、今年、21世紀美術館が開館しております。県のほうの県庁跡地のほうは、皆さんご存じのように、なかなか「これは」といったものが出せずに来ております。一応懇話会の報告取りまとめということで、電子図書館的な文化情報フォーラムというものの案を一応出したわけですが、今の段階では、何やら雲行きが怪しくなってきているということで、どちらかといえばセントラルパーク構想、緑地整備と今後行くのではないかと思われます。
 2003年には、広坂通り中央公園整備計画策定PI委員会ということで、これは民間のかたも入れて、広坂通り、中央公園、この一帯をどうすればいいかということを計画しております。多分この中で、用水の位置を県庁側に移設するといったこと等、何案か提出されているやに思います。
 金沢城の復元は県の管轄ということで、現在も復元の基本方針検討委員会のほうで、今後の復元を検討しているということころです。
 つい先日、県庁の跡地のいちばん兼六園寄り、昔、警察署があった所が、都心地区整備構想推進室が旧東庁舎跡地の緑地整備を開始するということで、今暫定的に木が植わっておりますが、あそこを何らかの形で緑地に整備することが発表されています。

●次のスライドは、中心市街地を対象とした行政の主な取り組みということで、ほとんど金沢市の取り組みということです。左側が施設等の整備、右側が仕組み・制度等の整備と分けてあります。これは5年間ぐらいの動きですが、2000年には竪町通り、武蔵スタジオ通りのモール化、せせらぎ通りの修景整備、片町、木倉町の広場整備、2001年には国道157号線武蔵−片町間の電線地中化、それからプレーゴ開業、金沢蓄音機館開館、竪町・香林坊にぎわい広場整備、2002年には駅前の再開発でルキーナ金沢完成、前田土佐守資料館、室生犀星記念館開館、香林坊ハーバー開館、2003年には香林坊−武蔵間、国道沿いですが、緑陰道路プロジェクトというものも始まっています。2004年には、にぎわい街道ミュージアム金信、これは金沢信用金庫の別館のような所をミュージアムとして使うということで、これが開館しております。それから、ITビジネスプラザ武蔵開館、金沢21世紀美術館開館ということで、左側はハード的な整備ということです。
 右側は仕組みということで、どちらかというとソフトの部分ですが、2000年にはフラットバスの此花ルートの運行開始、2001年には「まちなか住宅団地整備支援制度」、2003年には「まちなかにぎわい街道定住促進制度」、これはあとでまたご説明しますけれど、オフィスビルを住宅にコンバージョンするときの補助制度につながっております。それから、フラットバス材木ルート運行開始、金沢定住推進ネットワーク発足。これはなかなか利用者がいないということで、不動産、工務店、建設会社といったところがネットワークを組んで、町中に定住されるかたの補助金を、もっともっと幅広く使っていただこうという趣旨で発足しております。
 それから金沢まちづくり市民研究員機構発足、都心にぎわい回廊形成アクション推進事業、アートアベニューにぎわい創出事業、中心市街地業務機能集積促進事業、最後に来るのがオフィスビル、オフィスの誘致に対する、今年10月にできた助成制度です。
 これを見ていただいて分かるのは、2002年ぐらいからずっとやってきたハードの整備が大体終わりまして、今はソフトのほうです。それをいかに活用して、いかににぎわいを創出していくのか。そちらに対するソフト、または制度といったものに、金沢市のほうは力をシフトしてきているのではないかと思われます。

●これは朝方にも、いちばん初めにも見ていただきましたスライドですが、言い回しがいろいろあります。例えば今、武蔵から香林坊の間までについて議論しておりますが、金沢駅東口から21世紀美術館まで、これをアートアベニューと金沢市は称しております。したがって補助金の対象も、路線の線によって対象が違ってきているということで、定住促進の場合は、犀川大橋から浅野川大橋までの国道157号線、159号線に面したビルを対象にしている。アートアベニューにぎわい創出事業ですと、21世紀美術館からJR東口まで。事務所誘致の中心市街地業務機能集積促進事業ですと、これは本当に香林坊から武蔵間のビルに対してのみというふうに、それぞれが分かれているということです。

●これが今回の金沢学会にいちばん関連する助成金の制度です。一番上が定住促進ということで、まちなかにぎわい街道定住促進制度、これは2003年4月から発足しております。区間は、今言いましたように犀川大橋から浅野川大橋の間の国道157号線、159号線に面したところです。このオフィスビルのコンバージョン、住宅転用への支援、これは2004年4月に要件は緩和されておりますが、1棟当たり限度額が1億円、改修費の20%以内。それから入居する人に関しては、所得制限がありますが、最長2年間の家賃補助があるということです。それから、住宅併設のオフィスビルの新築への支援も1棟限度額1億円、2戸以上の住宅付置が対象となっております。
 アートアベニューにぎわい創出事業、これは2004年4月からスタートしておりますが、これはここに面した、21世紀美術館からJR金沢駅東口までの通りに面した1階への新規出店への支援で、これは家賃の50%、100万円までを2年間補助する。それから、歩道に面した部分のショーウインドーなどにアート展示場所を設ける。そういったものに対する支援が改修費の50%、300万円を限度として補助することになっております。定住促進のほうは、残念ながらまだ利用実績はないわけですが、にぎわい創出のほうでは、すでに2件ほど適用事例が出ていると聞いています。
 いちばん下が事業所誘致、これが2004年10月からスタートしておりまして、中心市街地業務機能集積促進事業というネーミングになっておりますが、事業所の新規進出への支援ということで、事業者向けには事務所移設・開設費用、家賃、それから市民雇用への補助ということで、従業員何人以上で一人当たり幾らというふうに決まっておりまして、合計3700万円まで補助が出るということです。それから、大家さんです。建物所有者向けには、ビルの機能向上等への支援ということで、外観へのリニューアルや空調、内装、電気通信設備といったものに対して、最高で1億円、改修費の20%以内という助成金がついております。これは香林坊−武蔵間に限定されているということで、これは始まったばかりで、まだ利用実績はないということです。

●これは、いろいろ細かいところです。細かい規制といいますか、出る場合、出ない場合があるようですが、今ほどのゼンさんのほうも、これを何か使えば、安く出られる可能性はあると思います。

(宮田) 一番上の最長2年間の家賃補助というのは幾らなんですか。

(半田) 補助金額は10%、月額限度額1万5000円、対象者は月額所得が44万5000円以下のかたとなっております。
 金沢市の取り組みの姿勢、助成は評価できると思われます。これも全国に先駆けて思い切った金額を思い切った地域に投入しているのではないかと思いますが、いかんせん、なかなか利用者が出ていないと。これは少しニーズがずれているのか、営業が足りないのか、この辺のところは、今後やはり我々も、こういったところをどうやっていくのかということはよく考えてやっていかないと、せっかくやったことに対して、無駄になってしまうという気がしています。

●最終的には行政の取り組み、これはいろいろなまちづくりの問題点は、我々が端で見ていて感じる部分と受け取っていただいてもけっこうかと思います。県と市、お互いに同じような部局があってやっているわけですが、かなりお互いに委員会、審議会などに乗り入れしていると。実態はそうなっておりますが、実際の調整、連携、協働がどう図られているのか。我々にとっては、非常に見えにくいところがある。それから、お役所仕事のような部分で、いわゆる縦割りの弊害防止はどう図られているのか。これも、関係部局とかなり根回しした上で、いろいろなことをやっておられると理解しております。それから、先ほど金沢市のにぎわい、定住プロジェクト推進会議、いろいろな名称の同じような名前のものがいっぱいあったと思いますが、似たテーマ、似た顔ぶれの委員会等がひょっとしたら多すぎるのではないかと。それから懇話会、非常設の委員会、懇話会、委員会、審議会といった名前、いろいろ役所の中で、行政の中では位置づけがあると思いますけれど、ここで決まったこととかそういったものは、だれがどうやって責任を果たしていくか。この辺のところも、若干見えにくい部分があると思います。
 それから結果の検証、改良が行われているのか。決まったことが、きちんとやられたのかどうか。これは我々も分からない部分がありますし、掛け声だけに終わっている部分があるかもしれません。
 それから、都心軸に対する助成制度は有効に活用されているのか。今のところは、なかなか適用の範囲が難しいと思いますが、逆に、適用地域の拡大が考えられないのかと私は感じております。特にオフィスビルのコンバージョン、先ほど宮田さんのほうも、かなり小さなビルのコンバージョンのようだったと思いますが、例えば武蔵の裏側の尾山町とか、一本裏に入ると割と小さめのビルとか、そういうものもけっこうあるような気がするのです。また、逆にそういった所のほうが、コンバージョンのようなものがしやすいのではないかと。武蔵−香林坊間の、いわゆる金融機関が持たれているビルは、あまりにもワンフロアが大きすぎて、いざとなるとなかなかワンフロア丸ごととか、そういったふうにいかないのではないかと感じもしておりますので、もう少し地域的にも拡大ということが考えられないかと思います。
 それから、待ちの市政だけでは、成果が出てこないのではないかと。これは今後ですけれど、例えば工業団地を造って企業を誘致するときに、かなり営業で行政も動いて、税制の優遇を含めて誘致をしているわけですが、オフィスを本当に呼びたいというのであれば、小松さんはそのような形でいろいろ動かれていますが、本当は行政も動いてもいいのではないかと思っております。
 以上、行政の取り組みということでのプレゼンを終わらせていただきます。ありがとうございました。




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