第2部 課題1 「都心のデッサン」
     
     

(大内) そうですね。ありがとうございました。ちょっと今の半田さんの話に加えさせていただきます。幾つか実際空いているものを考えますと、天井高の高い所でファッションショーでもやりたいというのももちろんありますし、少し見ますとユニークな所がやはりあるのです。それをもう少し精査して、生かしてやれば。多分1階が変わると、2階以上のテナントさんたち、あるいはビルのオーナーさんもだいぶ認識が変わってくる可能性がありますので、そういうきっかけに私たちはぜひしたいということだったのです。どなたからでも何かご意見を頂けるとありがたいのですが。どうぞ、永井さん。

(永井) 昨年もお呼びいただきました、永井です。私はソフトが専門なのですが、今、お話を伺って、ちょっとお話しできるかと思ったのは、何せ今の時代はテレビの目の前に座っている人をよいしょと起こして動かして、自分の所の施設の展覧会なり、劇場なりに連れてくるというのは大変な力技なのです。ですから、どんなふうな企画がいいかという、その企画のアイデアというのがものすごく大事だということであると思うのです。トレンドもしっかり見極めてやらなくてはならないと思うのです。
 実は今、うちでめちゃくちゃに人が来ている催しがあるのです。それは本当に偶然なのですが、韓流ブームに乗っかったのです。韓国文化院と共同主催して、韓国の伝統の長衣という伝統のスタイルから現代のファッションまでの展示をやろうということです。それから、毎日ワークショップとしてポチャギ作りとか、韓国の料理とか、何だらかんだら、今やっているわけです。それが、この東京で3〜4倍の参加希望があるのです。

(大内) 今の話は世田谷文化センターでやっている話ですね。

(永井) そうです。実は私、恥ずかしいことに2年前に「冬のソナタ」の第1部、第2部にはまりました。今はもうすっかり卒業させていただきましたが、そういうことで、勘のいい企画をできる人材が必要であると思います。
 それからもう一つ、これは非常に手軽です。一等地のビルの1階を借りるというのは、大変レンタル料金が安いとか何がしかがなければ、アーティストでも、中小企業クラスの人でもとても出ていかれないと思うのです。私のところでやっているのは、これは意外と成功したのですが、アート・フリーマーケットというのをやったのです。一種のリサイクルなどで、このぐらいの間口をそれぞれ貸して物をセールするというような手法で、それをアーティストに限定したのです。アーティストが自立的に食べていけるようにです。しかし、アーティストといっても先端的な高い質のものから本当に生活文化に近いような手作りのものまであります。今、ビーズをどうするっていうのがすごくはやっているのです。実は、私のこのネックレスも大変安いもので、木の実か何かを染めたらしいのですが、割と格好いいと思って買ったのです。たしか1000円ぐらいだったと思いますが、一間ぐらいの所でそんなものをやったのです。そうしましたら、お店をやりたいという人がものすごく手を挙げまして、何千人だったでしょうか、抽選するような形になったのです。今年の秋に2日やったのですが、何と8000人いらっしゃいました。うちは大体、何か展示をやっても1日100人来ればいい、2日で200人来ればまあまあというところなので、2日で8000人というのは相当な数なのです。
 だから、自分で全部取り仕切るというのは無理なので、自立的に何か自分の作ったものを売るお店を出していくみたいな、そのような発想をテンポラリーに毎週土曜日にやるとか、何かそのような形でにぎわいのようなにおいをつけながら、その中で才覚のある人が、もしかしたらここでやれるかもしれないというような、そんな形の導入、イントロダクションが必要なのではないかと思います。本当に一等地が空いていて、もったいないです。

(大内) そうですね。今の永井さんのお話のフリーマーケットについてですが、昔ですとフリーマーケットをやろうとすると、ここでフリーマーケットをやりますということをどうやって皆さんに知らせるかということに行政のかたたちなどがすごく頭を悩ませたのですが、最近、これは全く時代が変わりました。要するに、インターネットなのです。要するにWebサイトを開けば、Webで横に情報が流れていきますので、印刷屋さんに行ってビラを刷ってまくとかといったことを全くせずに実はお客さんを集められるという、これは今までには全くなかった世界です。そういう意味では、むしろコンテンツさえしっかりしていれば、あとはWebで開ければ、相当の人が呼べます。ですから、僕らのような人間は余計な企画を立てないで、場をうまく提供するということのほうが多分・・・。おっしゃったケースもそういうケースですか。

(永井) やはり進出しやすい条件というのがあると思うのです。もちろん、アーティストの多い町ですので、もしかしたら金沢でやっていらっしゃるかもしれないのですが、そういうものをきっかけに何か始められないかということです。

(大内) ありがとうございます。では、どなたか。どうぞ。

(宮川) 金沢経済同友会の会員のCPUの宮川と申します。実は今、全般のお話を聴かせていただきまして、金沢らしさというものをぜひ取り入れていただきたいと思っております。実はドイツに当社と提携している会社がありまして、何度か訪問しているのですが、アッシャフェンブルグという所で、町を歩きたくなる所なのです。少し歩くと必ず教会がありまして、その教会までたどり着きますとほっとするのです。聞きますと、ほとんど金沢の町内会に一つ教会があるということですので、そういったような町に金沢もならないかと思います。昔、お寺さんを寺町に一堂に集めたという経緯もありますが、そのお寺さんを各町内会に戻せないかということもふっと思いました。
 今、兼六園も石川県を挙げて世界遺産にしようという動きもありますし、先ほど広坂通りのこともありましたが、兼六園から違和感のないコラボレーションされた形にデザインしていくという形で・・・。発展都市、ニューヨークであるとか、先ほど参考にありました新しい感覚のデザインもすてきであるとは思うのですが、この中に私は金沢らしさを求めたいと思っております。以上です。
(大内) ありがとうございます。実際、現状でいいますと、兼六園にかなり多くのお客様が観光客として来られるのですが、ほとんどのかたが実はあそこでバスを降りられて、またバスであそこからどこかへ行かれてしまっています。要するに、まさに金沢らしさの演出の中で、広坂をずっとお歩きいただいて、香林坊の方へ動線が本当はうまくできればいいのですが、そういうふうになっていないのです。それも大事なポイントかと思います。

(福光) 失礼ながら、今の宮川さんのご発言をもう少し補足させていただきます。今、金沢市がファッション産業都市宣言をされました。大変けっこうなことで、少しそうやってにぎやかに新しいタイプの産業も興そうということなのです。その中で特に金沢らしい風合いを持っていたほうが世界的に有名になるのではないかという意味もあって、オリジナリティーという意味では和の要素、それから先ほどのインフラとしても和の要素、それからアーティストという言葉の代わりに職人と置き替えるとどうなるかとか、もう一回和を用いたイノベーションというのもさらに必要であろうし、当然、洋の産業でも和を用いると金沢らしくできないかとか、銀行の新しい使い道にも幾らか和を成分的に足すとオリジナリティーがとても出ないかとか、そういうのは大いに実験しなければいけない要素ではないかと思います。

(大内) そうですね。どうぞ。

(水野誠一) 先ほどの事例の中で、銀行、金融機関がずっと並んでいて、これはある意味で金融機関というのはまちづくりという上では最悪の要素だと思うのです。ともかく日曜日はシャッターを下ろしてしまう、3時になったらシャッターを閉めてしまう。しかし、これも今までの常識であると、銀行というのはセキュリティーがあるのであるから、それは当然であるといわれていたのですが、東京で新生銀行というのが今度できて、日曜営業とか、あるいは銀行の中にカフェを併設するというようなことをどんどんやり出したのです。これからはその辺の常識を一度リセットするというところからいきますと、そういう意味での店舗化、あるいはパブリックスペース化、あるいはコミュニティースペース化しなければいけないというレギュレーションを行政と一緒になって作っていくということ、あるいは場合によっては銀行というのは1階ロビーを全部店舗に明け渡して2階以上で営業しなさいというような、かなり乱暴かもしれないのですが、それくらいのレギュレーションを作ってやっていかないとと思います。
 私は町が栄える要素としていつも言うのですが、三つの「なみ」があるのです。一つは町並み、二つめが営み、そうすると今度は人が来て人波ができるのです。ところが、先ほどの事例は町並みも金融機関によって途絶える。したがって、営みがほとんど限られた時間しかないということで、人波ができるはずがないのです。ということは、そこのところは相当思い切ったこと、特に金融機関というのはきちっとお金がある、経済力のある企業ですから、そこに全面的な協力をして頭を切り替えてもらうということが、まず必須ではないかと思います。



(大内) 今ここに北國銀行さんと日銀さんもいらっしゃいますので、個人のご意見でもけっこうですので、ぜひお願いします。

(米谷) 先ほどからいろいろと議論の中で、随分と銀行が悪者になっているというか、銀行が悪者になっているのではなしに、建物そのものが悪者になっております。私もそうですし、日銀の佐藤支店長、それから金信の廣部会長もおられますが、金融機関としてもいろいろと土日の営業については考えています。私どもも本店の横の旧山一を買収したほかに、住宅ローンセンターとして土日営業もやっておるわけです。それから、先ほど、新生銀行さんがいろいろ店舗を貸してカフェにしているという話がありました。それについては随分規制も緩和されておりまして、従来はインストアー・ブランチというものが先行したのですが、ブランチ・インストアーという考え方は十分持っております。
 それから、実は私どもは武蔵から香林坊に3店舗を展開しているのですが、武蔵については今、水野一郎先生を中心にいろいろとデザインしていただいておりますが、十分パブリックスペースを提供する用意があると思っております。また、香林坊支店はデパート、商店が一緒になっておりますので、今でもすでにそういう形になっております。本店については、実は新築して46年、50年近くになります。しかし、今の建物でも、先ほどの水野誠一さんのご指摘のとおり、実は1階のスペースというのはあんなにたくさん要らない。今後どんどん広報部門が集約されていく中で、スペースは必ず空いてくると思うのです。だから、そういったところについては、日曜も何か営業できるような形のものを考えていくという方向は十分あると思いますし、そういう気持ちも持っております。できたら、佐藤支店長、あとをお願いします(笑)。

(大内) 日銀の支店長ですが、個人の意見でもけっこうです。

(佐藤) 今、ご紹介いただきました佐藤です。まず、日銀の支店長として、そのあと個人のお話ということにさせていただきます。我々、支店運営をやっておりますが、最近、日銀は地域貢献というのは随分意識しております。これは、建物の提供とかという次元のものではなくて、もう少し広い範囲でやっております。そういう中で今、現実に何が行われているのかということですが、皆様全く意識されていないと思うのですが、実は日銀の前庭を営業時間中も、営業時間後もお通りいただいて、日銀のスペースの中に入っていただいております。この辺は、敷地の管理上、本当にこれがいいのかどうかという問題について、もう一度考えて、あるべき姿というのを考えなくてはいけないと思っています。
 例えば、今、前庭を駐車場にも利用していますから、歩いておられるかたと駐車場で何かトラブルが起こらないかというのをまじめに考えているところで、どういうことができるのかということです。決して、皆様にかえってご迷惑をかけるということは考えていないのですが、歩いておられるかたがけがをしないようにとかということも考えているということです。一応、ここまでが私の立場でお話しすることで、今、水野さんからご指摘があったことは、個人的に私はそのとおりであると思って聞いておりました。
 話がちょっと変わるのですが、実は私がこちらに参りましたのは今年の3月で、半年前までは熊本という所に居ました。熊本からこちらに参りまして、そういうまちづくりについて金沢がものすごく前向きに考えて、いろいろなことをもう何十年もやってこられているということで、大変びっくりしました。熊本は今、始めたばかりです。そういう中で、これは多分この会議全体の議論にも多少影響することであると思うのです。これまで10年間の変化、今をどうしようかという議論が今あるのですが、私はこれから先、金沢がどうなっていくかという展望のもとにその議論に入っていかないと、実はデッサンができないのかなというのを今、お聴きしていて思いました。
 今から大きく変わっていくというのは何といっても、来年か再来年をピークに人口減少の時代に入っていく、高齢化の時代に入っていくということです。これは先ほど大内先生からもご指摘がありました。もう一つは、国、地方公共団体が財政的に非常に厳しくなってきているということです。この流れはこれから先、良くなるというよりはむしろさらに厳しくなっていく可能性があります。それは石川県であっても、金沢市であっても例外ではありません。最近の三位一体改革の議論を聞いていると、そんな不安があります。
 ただ、一方で金沢については大きなプラスも実はありそうだと思っています。これは数年先か、もう少し先か分かりませんが、新幹線が金沢にやってきます。この効果について、どれぐらい何が起こるかというのは正直いってよく分かりません。ただ、私が前に居た熊本では、今年の3月から、鹿児島から熊本の南部の八代まで新幹線が走っています。今、あそこは中途半端なことに、福岡から八代までがちょうど中抜けの状態になっていて、これが完成するのが恐らくこちらの北陸新幹線が開通になるときと同じような時期で、せいぜい1〜2年の差という状況になっていますが、今年の3月に鹿児島に開通したことによって、実は南九州では新幹線というのはものすごく意識されています。それに比べると、こちらでは非常に大きな新幹線という問題について、新幹線が早く来てほしいという議論はいっぱいあっても、新幹線が来たときに一体この町がどうなっていくのかということは、私自身が議論させていただいていないせいか、あまり議論がないのかなと思います。
 実は今、新幹線の開通によって南九州で起こっていることは、鹿児島がものすごくにぎわっているということです。ホテルラッシュになっていて、新八代から鹿児島中央駅までの旅客が、JR九州の支店長によれば、たしか去年よりも倍ぐらいに伸びている、つまり、人のにぎわいがものすごくあるとのことです。
 ここから先は、まさにもっと私の個人的な勘ですが、金沢というのはこれだけブランドがありますから、実は新幹線が金沢まで来たら、相当効果が大きいのではないかというのが私の感じです。もちろん、ストロー化現象で東京に行ってしまう懸念もありますが、むしろ逆なのであろうと思います。新幹線が通った沿線ではストロー化現象が起こる所と集まる所がありますが、金沢は間違いなく後者であろうと思います。しかも、もしかしたら、これが終着駅になれば、ますますそういう感じが出てくるのではないかと、ちょっとそんな感じがしますので、そういう視点で町がどうなっていくかということが想像されないと、デッサンしたときにデッサンを間違えます。むしろ、新幹線が来て、いろいろな企業が東京から入ってきて、そのときに無秩序に町に入ってこられると、かえってまちづくりが壊れるという視点もあってもいいかなということなのです。

(大内) ありがとうございます。長期的ビジョンの話はまさにそうなのですが、新幹線の件については水野先生からちょっとコメントを頂きます。

(水野一郎) 私ども、新幹線については議論をだいぶしております。いちばん大きいのは東北新幹線ができたら仙台が東北州の州都になって、ほかが相対的に下がっていったということです。山陽新幹線ができたら広島が伸びて、そうなりました。九州新幹線で福岡がかなり伸びました。そして、プロ野球の球団を仙台に持ってきたように、サッカーも全部来るし、歌舞伎も公演するし、それこそユーミンでも何でもそういうところが動き出すという、そういう州都というのができてくるであろうと思っています。
 北陸新幹線が来たらどうなるかという議論をかなりしていまして、そのときに一つ大事なのが、州都になるときの受け皿としてどうするかといったときに、金沢の場合は一点集中型の核都市であるということです。ここに450年の時代の層とすべてのファンクション、都市機能が入っているわけです。そういう一点集中型の都市であったために、逆に戦後の金融の伸びに対して、金融がほかをつぶしながら、先ほど言ったように地元資本を追い出しながら立地したという状況です。そのときに、州都でも同じようなことをしてはだめであるというので、県庁を移転して、駅からずっと行く、要するに一点集中型の都市から軸状都市へ転換させたわけです。そちらに受け皿を作り、そのかわり金沢は金沢というきちっとした個性を保てる所としての旧市街地を考えるということです。
 そのときにいちばん今、旧市街地で金沢らしくないのがこの南町界わいであるととらえているのです。ですから、できたらここに地場のエネルギーが入ってほしい、地場の創造力が入ってほしいと思っているわけです。それをどう展開できるかがかなり勝負になるであろうと理解しております。そういう意味でこのコンバージョンは州都化戦略の一つでもあるのですが、それが金沢らしさ戦略、追い出していってしまった金沢の固有性を戻そうという戦略につながればいいと思っております。

(大内) ありがとうございます。佐々木先生、どうぞ。

(佐々木) 私はこのあとのセッションのことで頭がいっぱいでしたので、すみません。
 今、日銀の佐藤支店長からご指摘がありましたが、私も金沢大学に15年おりまして、金沢は恐らく新幹線が伸びてきたらいちばん得をするだろうと思っておりました。しかし、得をするといってもいろいろな得のしかたがあるので、そのときまでに、金沢はやはり日本の金沢というレベルを越えて世界の金沢であろうということで、世界的に意味のある都市づくりをしたほうがいいということがあったと思います。
 幸い、この21世紀美術館はニューズウィーク紙が取り上げまして、見開きで紹介しています。現代アートの全く新しいタイプの美術館ができたというのは、多分ビルバオの次を行くという評価になると思うのです。今日、朝からありましたが、そういうものを持った都市である金沢が、金沢の固有性を踏まえながら現代にどう生きているかという姿をきちっと示していく。創造都市会議と金沢学会というのは、まさにそういう意味では、金沢の問題は世界の都市問題に通ずるという形で考えたいと思っているのです。また、そういうことが、ストロー現象で東京に吸い込まれない独自のスタンスを固めることになると考えています。

(大内) ありがとうございました。そろそろ時間になりましたので、簡単にまとめさせていただきます。
 一つの大きなポイント、皆さんの関心のあるポイントは、今回はある意味では私たちも追い込まれて、少し短期的な視点で、とにかくここからでも手をつけようという提案であったわけですが、そのときにハードの問題だけではなくて、ソフトについてもっと考えなくてはいけないということです。例えば、木虎さんからご紹介いただいた回遊性ということを考えなくてはいけません。あるいは、水野誠一さんのほうから文化とまちづくりという視点、文化は横糸であるというご指摘などもそういうご趣旨であったと思います。また、永井さんのほうから、物を作ってそして何かをしても、結局、企画が勝負であるというご指摘がありました。これは、我々がまだまだ検討しなくてはならない次の問題としてあるように思います。
 もう一つ、これはやはり非常に大きな流れとして僕らは考えなくてはいけないと思うのですが、規制緩和というのは相当大きいと思うのです。銀行さんを今日、別にやりだまに挙げるつもりで言ったわけではないのですが、はっきりいって、要するに銀行はやりたくてもできなかったのです。手かせ足かせで、すべてあれをやってはいけない、これをやってはいけないという状況であったわけで、ようやくここへ来て少しずつではありますが、少し考えたらどうかという時代になってきたわけです。だから、逆にいうと、そういう意味で早くいいアイデアを出して、とにかく先へ走ったほうが勝ちということにもなってきている。これは企業だけではなくて行政もそうで、三位一体改革でいろいろと、山出市長は一揆を起こすというようなことまでおっしゃっていて、大変ご苦労の最中かと思います。しかし、地方分権の流れ、地域のことは地域でやらせてほしい、いちいち国の指図は受けないという流れは大きな意味では変わらないはずですし、元気のある地域が先取りしていくという構造になるということ自身は変わらないと思います。とにかく制度のほうは緩和していくということを前提に、私たちはいろいろ提案して検討していって、場合によっては少し先走りくらいの提案をしなくてはいけないと思います。
 今日、提案いただいたもので、ハードの問題では、水野先生は50億くらいでできそうだという話ですが、細かいところでは、実際私も見ていって、この壁を抜いてしまうとこれは耐震壁であるからちょっと抜けないのではないかとか、いろいろなところもあるといえばあるのです。しかし、現実に空いている所を何らかの形でご提供いただくということは、確かに全くスクラップにして新たなものを建てるということよりも、使い回しをするということですから、はるかに少しの費用でできるかもしれませんので、これもやってみるということがすごく重要であると思います。
 最後になります。非常にいいご提案です。長期的ビジョンの問題なのですが、まさにこの21世紀美術館も私たちが非常に長期のことを考えて作ったわけです。それから、これはちょっと余談あるいは苦言になるかもしれませんが、金沢を代表する企業さんも実は東京に出ていってしまったりしているので、最終的には本当に金沢を代表される企業さんに本社をもう一度金沢へお戻しいただく、あるいは南町界わいにしっかり本社を戻すということが、ゴールなのかもしれないです。グローバルに展開している経済ですから、必ずそうでなくてはいけないというナショナリズムを議論するつもりはありませんが、本当に地場の産業の皆さんにとって使い勝手のいい、あるいはにぎわいをもたらすようなこの百万石通りとは何なのかということでは、まだまだ検討の余地があるように思いました。大変いろいろな意味で参考にさせていただけるようなコメントをありがとうございました。以上で終わります。

(福光) これで第2部を終了いたします。第3部でこのデッサンを実現するためにどんな仕掛けが必要か、今、現実的にどんな補助制度がすでにあるかといったようなことも含めての議論に入らせていただきます。ありがとうございました。

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