■モデレーター プレゼンテーション
●大内 浩
 20年前に来て以来、金沢には60回くらい来ています。1981年頃、若手経済界の方たちに2001年を考えて金沢のビジョンを作ってくれという話が、私と金沢とのきっかけでした。実は当時、金沢の経済界の方たちは、この町が何か古くさくて、湿っぽいので、何かぱっとした話を私に期待していたらしいのです。そのとき私は「ちょっと待ってくれ」と申し上げました。つまり、確かに金沢の町は見た目は非常に歴史都市であって、古くさいかもしれない。例えば、東京に江戸は残っているのだろうかということを考える。東京は戦災で焼け、震災でも焼けていますので江戸といえるものが形として残っているものはほとんどない。お庭と石垣のようなものしか、東京には江戸が残っていないのです。
  実は金沢は江戸の町だというのが、私のそのとき考えたことです。京都は明らかに江戸の町ではない。もっと前の平安の町だと思います。日本の大都市はほとんどが爆撃で焼けています。京都であり金沢、倉敷、あるいは高山など小都市は残っていますが、それ以外の都市は太平洋戦争中の爆撃や火災で焼失しているわけです。そういうことを経験していない都市という意味で、金沢は非常に貴重な存在です。その金沢を前提に何か新しいことをやるということは、むしろあなたたちのテーマではないのかと申し上げたわけです。いわば一見古い皮袋の中に新しい酒を入れるということの緊張感、あるいはおもしろさ、そういうことの楽しみは、もはや東京にもできないし、あるいは横浜や神戸にもできないおもしろさがある。400 年の歴史の、ある種の大変な歴史性のものの中に新しいものを作っていく、注いでいくというのは、実は大変なノウハウがいる。今、何人かの先生方から問題提起がありましたように、オールドの方が価値があるという議論です。つまりそこは全く真っ平らな、東京のニュータウンのように何もないところに町を作るということよりも、はるかにノウハウがいるわけです。ということで、この町を広い意味でリノベーションするということはどういうことなのかということに、私は関心を持ちましたし、ぜひそういう問題意識で町づくりに取り組んでいただきたいということが、私が申し上げたことであります。
 私自身、建築の出身でもなければ工学部の人間でもないのですが、例えばオフィスを住宅に変えるにはどうしたらいいかということについて関心を持ったり、あるいはそのためにどういう法制度をいじったらいいかということを、大学でもある種の研究のテーマとして取り上げております。つまり、ある種の古いものの空間を使いながら、そこで新しいものをやる。そこから何かが出てくるということは、日本の中ではどこの都市にでもできない、金沢や京都のほんの限られたいくつかの都市にしかできない楽しみなので、ぜひその楽しみは捨てないでいただきたい、そこに価値を見出していただきたいということが第1点です。
 第2には、金沢がいろいろな伝統文化に敬意を表していることは結構なのですが、そのときに経済界の方たちと作ったキャッチコピーのうちの1つで今でも気に入っているのは「伝統といっても、それが生まれたときは前衛である」です。つまり、前田利家も尾張からやってきた人間でありますから、金沢もある意味で外から流れ込んできた。今、サロンというお話もありましたが、外来文化、あるいは百工比照に見られるように、京都あるいは全国から工芸師、アーティストを集めて、今の伝統文化ができている。伝統というのは多くの場合、場合によっては破壊を伴ったり、あるいは非常に異質との出会いから生まれるものでありますので、もう一度百工比照のようなことをこの金沢でやろうではないかと。そうしないと金沢の明日はないというようなことを申し上げました。
 最後に、あるチャートをお見せします。大宝律令の時代から、日本の人口は今までにどういうカーブを描いているかということなのですが、約1000年近くの間、日本の人口は1000万を切っている。それがちょうど応仁の乱が終わったあたり、要するに農業革命が起きて、日本は3倍に人口が増えております。そのあと、江戸時代はほぼ3000万のオーダーで、人口はあまり増えておりません。しかし開国のあと、実はまた3倍から4倍に近く日本の人口は増えておりまして、20世紀は、とんでもない都市の爆発の時代といっていいくらいの時代だと思います。今のままで行きますとほぼ2007年で、大体日本は人口のピークを迎えて、1億2700万人くらいになります。
 問題はここから先はどうなるかということなのですが、人口の出生率が今1.3 というようなレベルですので、もしそのまま行くと、21世紀は大体6000万まで落ちるわけです。こういう急カーブで日本の人口が減るということは、今まで一度も経験したことがない。ということは明治以来の日本のさまざまなインフラの整備をしてきたものが、ある意味ではいらなくなるということです。そういうふうにネガティブに考えるか、これこそひょっとするとチャンスかもしれないと考えることもできると思うのです。必ずしも江戸期の人口の停滞期に日本の文化が衰退していったということではありませんし、そういう意味ではある意味のチャンスかもしれない。
 しかし、物理的に人口というものは、このままでいきますと明らかにものすごくドラスティックな減り方をしますので、いったいこのときに何が起きるのか、我々はこれに向かって何を準備したらいいかということは、まだあまり皆真剣に議論していない。高齢化ということくらいしか議論していないのですが、多分全く違った発想でこれから都市を作り変えていく、あるいは都心を作り変えていくということをしなければ、間に合わないというのが私の問題提起です。
 

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開会あいさつ
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プレゼンテーション
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 竹村真一
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 市村次夫
 川勝平太
 小林忠雄
 大内 浩
 松岡正剛
 山口裕美  
 米井裕一
 佐々木雅幸
●セッション1
都心で実験してみたいこと
●セッション2
これから議論すべきテーマは何か
●セッション3
創造都市とは何か
 
全体会議のまとめ
委員長総括
実行準備委員会