■パネリスト プレゼンテーション

●市村次夫
 長野市の北東17〜18kmのところにある人口1万2000人の小布施町からまいりました。酒屋だけでは食べられないので、もう一つ家業として栗の菓子の製造販売などもやっております。それでは食えないというのは謙遜ではなく、人口1万人くらいの小さな町で、100 年200 年を1つの商売でというのはなかなか苦しい。私どものたった300 年くらいの変遷を見ても、やめた事業が多いということでございます。
 そういう意味で、先程松岡先生から都心は移るものというお話があり、そうだと実感としてます。移ってしまうからいろいろな商売をやらなければならないということであり、また1つの商売もちょっと主たるものを変えてくる。例えば栗の菓子の場合、たかだか30年前までは、加工して作って他所へ卸すというビジネスでした。それが30年前頃から、徐々に小布施で売ろうという動きも出てまいりました。ただ小布施で売ろうと思ってもなかなか来てくれないから、レストラン、美術館、博物館などを直接、間接的に運営したりしているわけです。
 しかし小布施のような小さな町は、それによって都市としての性格が変わってくるということも言えるわけです。小布施の町は、戦後50年だけを見てみても、最初の30年の間、商店街が中心地でした。それが20年前には早くも衰微して、役場が庁舎を新しくしたそのすぐ前に、統合された農協関係の建物ができました。そうすると町の中心地は農協の本部であり、役場でありというような時代が数年続きます。と思う間もなく、北斎館という美術館を20年ほど前に作りました。そうなると今度は商店街でも行政の中心地でもなくて、北斎館が町の中心地になってくる、こんな変遷をたどります。
  先程、金沢は古いから、だからこそむしろ現代美術をというお話がありました。小布施も似たような考えは常にあり、北斎館があるからこそ現代彫刻展などをやってみる。小布施の中心部でそういうことをやると、周辺部でもずいぶんそういう影響が出てくる。そうなってくると、都市と在を考える場合に、1つは小布施が長野市から見ると在の地域です。しかし小布施の中でも、実は都市の部分と在の部分がある。同様に長野県は東京から見れば在であり、東京が都市、都である。しかし、ニューヨークから見れば日本、東京も在だと。つまりこういう構造なのだろうと思うわけです。
 今日、非常にうれしいのは、必ずしも金沢にこだわらず都市の問題をやれとおっしゃる。これはいいことだと思います。今日本で一番心配すべきは、東京都の世界主要都市における競争力が落ちているという問題だろうと思うのです。ニューヨークに勝てとは言わないけれども、少なくとも上海に負けるなと言いたい。今の感じでいったら10年以内に負けてしまうのではないかと、日本の在に住む者は大変危機感を感じています。さらに言えば、日本の中でも極めて魅力的な金沢がより広い分野で強い存在感と魅力を増していただきたいと思うわけです。
 都心(みやこごころ)が何かというのは、とにかく私が申し上げたいのは、田舎心というのは、うっとりした気持ちで貢ぎたいということなのです。さらに言えば、都市論はいろいろありますけれども、都市の要件を満たしている中で、都市の中でも都は何かというと、私は在に対して、より富の格差が大きい、めりはりがある、富が集中しているのがまず都だろうというのが第1点です。
 もう1つは、政治でも社会でも文化でも何でもいいのですが、その分野で非常に土着性の強いものをソフィスティケートして、そして広いエリアに配給する、そういう機能があるかないかが、やはり都性の2番目の属性だろうと考えています。例えば、イギリスあるいはロンドンが、レゲエのようなものを洗練したかたちで世界に配給する、あるいはウィスキーなどスコットランドの非常に土着性の強い、木こりの飲みものだったものを世界中の飲みものにしてしまう、世界商品にしてしまう、そういうものが都性というか、都の第2番目の属性かと考えております。
  

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 竹村真一
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 市村次夫
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 小林忠雄
 大内 浩
 松岡正剛
 山口裕美  
 米井裕一
 佐々木雅幸
●セッション1
都心で実験してみたいこと
●セッション2
これから議論すべきテーマは何か
●セッション3
創造都市とは何か
 
全体会議のまとめ
委員長総括
実行準備委員会