■チェアパーソン プレゼンテーション

●水野一郎
 私は建築・デザインと都市計画の両方をやっており、今回のテーマである都心(みやこごころ)というのは、どちらかというと建築・デザインの立場に近いイメージがあります。この創造都市会議で、日本中の都心(としん)が疲弊していることに対して、創造都市というイメージから、何か新しい方向性が少しでも見えてこないかということが今日のテーマです。
 
まず前回のプレシンポジウムの都心(みやこごころ)について、ちょっと振り返りたいと思います。そこで確認したことは、都心(としん)の果 たしてきた役割です。各時代の社会、経済、政治の中心地でしたし、文化、教育、生活そのものの中心地でもありました。したがって都心が常に時代を表現しており、また常に新しい時代を創造してきたと思っております。
 江戸時代の都心について、さまざまな都心の人々の感性、風景の中から生み出されてきた江戸の美についてのお話、あるいは、都市の共同体の中から生み出されてくる民俗学というものがあるというお話もいただきました。金沢らしさや金沢気質というものも、都心に高密な共同体があった時代のイメージかと思います。それがどういうわけか明治維新以降、中央集権の体制、すなわち東京あるいは西洋近代化というヨーロッパの近代主義を取り入れること、あるいは富国強兵、勧業という意味で、経済的に追いつき追い越せという思想などがあり、都心には銀行やオフィスビル、商業ビルなどが立ち並ぶようになりました。我々の分野の都市計画でいいますと、大体都市計画の色塗りといって、都心は真っ赤に塗ってあります。近隣商業地域などというかたちで、商業をメインテーマにして、銀行やホテルや行政機関が並ぶ真っ赤なゾーン。それはビルが立ち並ぶ高さ制限、建ぺい率、容積率ともども、いかにも高密な都心という姿を作ってきたわけです。  ところが、最近は都市域が拡大して都市間がつながりはじめました。それは交通 体系、あるいは流通体系、情報システムなどが都市をリードしてくるようになってきたわけですが、明らかに都心が求心力を弱め希薄な存在になっております。いわゆる都心衰退という現象です。よく商業だけの話がされますが、実は業務機能、オフィスの床面 積も、行政機能の比率も減ってきております。ちろん人口は金沢で3分の1くらいに減ってきて、教育機能や医療機能、文化機能も転出しております。すなわち、商業だけではなくあらゆる面 で、もうすでに都心を捨てはじめている、逃げはじめているといっていいのかわかりませんが、都心はそういう状況にあります。例えば金沢のメインストリートを思い出していただきたいと思います。
 金沢の都心(香林坊、武蔵、南町)を調べると、銀行、生保、損保がメインストリートの多くを占めています。これは明らかに明治維新以降の経済成長期の姿ですが、現在この部分は大変寂しい町になっております。振込や電子マネーなどがあって、ここに来る必要がほとんどなくなってしまったものが残っている。あるいはこういった根本的に賑わいを作らない存在なのですが、近年でいえばゼロ金利や不良債権や貸し渋りなどいろいろあって、さらに何となく活力がある存在ではなくなってきております。こういった都心をこのままにしておくのか、このあとどうなるのかということに、私は大変興味を持っておりまして、今日の基本的なテーマにしたいと思っております。
 昨年のプレシンポでは、21世紀の話がずいぶん出ました。デジタルツールによるコミュニケーションの革命によって、都心がどうなるかと考えていたわけですが、いろいろな新しいインフォメーション、あるいはコミュニケーションが可能だということはわかったのですが、一方でどこの地域でも情報が手に入るということは、どこの地域に住んでいてもいい、それから人と人との結び付きは地域を簡単に越える。そうなればどこに住むかを問うことはあまりないのかもしれないということを考えて、少し心配だと思っておりました。いろいろな経済社会共同体的な都心を作ってきた過去の時代は、一方で地縁、地域社会も健全でした。家族という血縁社会もある意味で健全でした。会社という社縁の社会も健全でした。そういうことが合わさって共同体を作ってきたわけですが、そういった地縁、血縁、社縁というものも、近年のいろいろな事件を見ればわかりますように、大変希薄になってきております。そういう意味で、だんだんアナーキーな状態、混乱的な状態をいくらか心配性な立場に立つと想像せざるをえない、そんなことを私は前回のプレシンポで感じたわけです。
 過去の都心もさまざまに変質してきています。そこで今回のシンポジウムでは、これから先の都心はどんなふうに変質していくのだろうか、だれのための都心なのだろうか、何をしている都心なのだろうかということを考えたいと思っております。近年、都心といいますと、中心商店街活性化や歩く都心などということがいわれますが、そういった今日・明日の問題ではなく、どういう都心があるのか、あるいは創造都市にとって都心とはどのように位 置付けられるのかということを考えていきたいと思っております。
 都市や都心(みやこごころ)や、あるいは都心(としん)ということに対して、大変造詣が深く、また好きではないかと我々が勝手に想像してメンバーをお願いしてあります。第1分科会は「都心で実験してみたいこと」ということです。本番のワークショップに備えて何かご提言をいただきながら、都市について考えたいと思っております。都心という舞台で楽しむ、元気にする、あるいは遊ぶ、そんな仕掛けができないか、考えられないかと思っております。第2分科会は、「これから議論すべきテーマは何か」ということです。創造都市会議のテーマを探すわけですが、この都心もその1つではないかと思っております。来年度は本シンポジウムへ移ります。そういった意味で、基本テーマを探したいと思っております。第3分科会では、前回の続きの「創造都市とは何か」ということで、やはり基盤を固める意味で議論を進めていただきたいと思っております。その創造都市像を求めていけば、少しは都心(としん)、都心(みやこごころ)が見えてくるのではないかと思いますので、自由な議論を期待したいと思っております。このテーマは広がりが大事です。いかに広がって、いかに実感で語れるか、いかに本当の気持ちで語れるか、そういうふうになっていただければ、それこそ都心(みやこごころ)ではないかと思っております。今日一日、議論の広がり、あるいは深みを期待しております。よろしくお願いいたします。
 

金沢ラウンド誕生について
パネリストプロフィール
モデレータープロフィール
  開会あいさつ
福光松太郎
 
プレゼンテーション
 水野一郎
 伊藤光男
 竹村真一
 米沢 寛
 金森千榮子
 市村次夫
 川勝平太
 小林忠雄
 大内 浩
 松岡正剛
 山口裕美  
 米井裕一
 佐々木雅幸
●セッション1
都心で実験してみたいこと
●セッション2
これから議論すべきテーマは何か
●セッション3
創造都市とは何か
 
全体会議のまとめ
委員長総括
実行準備委員会