産業論から見たクリエイティビティ  富沢木実

成功例を見せつけられて文化ショックを受けています。経済が大きく変わりつつあり、グローバル経済という非常に厳しい世界的な競争がある中で、それぞれのまちのアイデンティティが重要になってきます。私たちの身の丈にあった暮らしの空間が非常に気持ちのいいもので、そういうサスティナブルな空間を維持していきたいというのがひとつ。また、これまでは製造業等が日本の経済を支えてきたわけですが、これらが弱くなってきた中で私たちはこれからどうやって経済を支えていけばいいのだろうか。グローバルな競争の中で地域や都市は、今後どういうふうにして経済運営をしていかなければいけないのだろうか。あるいは、どうやって自分たちのアイデンティティを世界へ持っていけばいいのか、いま私も考えているところです。そういう意味で今日のお二人のお話は大変参考になりました。金沢も含めて日本中のまちがこれらについて考えていかなければならない。まさに重要な時期なのです。 創知産業、クリエイティブ産業というイメージで、生み出す母である都市という捉え方をしていました。古い町並みを残すとか、現代アートをその中にぶつけていくことも大切だと思っていますが、直接的に経済の活性化につながることはないのでしょうか。佐々木先生が修復ということが重要になってくるとおっしゃいましたが、建物の修復だけではなく靴も修理をする。イタリアの靴はもともとすばらしいのですが、修理屋さんがまちの中にたくさんあり、気に入った靴を修理して長く履きます。修復・修理も手仕事とクリエイティブシティのひとつのあり方だと思います。 私は現在、デジタルコンテンツという映画やゲームソフトなど、クリエイティブとビジネスの間になるようなクリエイティブをいかした直接的にお金が儲かるビジネスに関心があります。西側のシリコンバレーに対して、ニューヨークでは、シリコンアレーというところがあり、デジタルのコンテンツをたくさん生み出しています。ニューヨークという芸術のまちならではのアーティストが住んでいる中で、広告業や放送業の文化が重なり合って新しいビジネスが伸びているわけです。あるいは、パリでは古い町並みとファッションが重なって、ファッションビジネスといえばパリとなっています。 今回、お二人のお話でアートを使ってまちを活性化していることに感動しました。それを観光というビジネスに加えて、たとえば映画産業を起こしたり、ファッションビジネスを起こすとか、もう少しダイレクトなビジネスの活性化は考えてもよいのではないでしょうか。