バーミンガムの事例・追加アンソニー・サージャント

バーミンガムでは10年前に会議を開催しました。2日間の会議に主要な文化政策のアドバイザーが世界から集まり、経済的、交通、インフラ、社会問題等について話しました。バーミンガムにおける1990年代の歴史がこの2日間の会議で集約された形で様々な問題について議論しました。金沢ラウンドの計画についても非常にすばらしい機会だと思います。私たちが何かお手伝いできることがあれば、そして継続的に金沢とバーミンガムがリンクをはることができたらと思います。私でお力になるでしょうか。

さて、クリエイティビティとイノベーションという2つの言葉をよく使います。クリエイティビティ・創造性というのは新しいアイデアがつくられるシステムのことで、イノベーションはそれが実施されるシステムです。したがって、この2つは区別をしなければいけません。クリエイティブに付加したものがイノベーションという形になるわけです。知的な、分析的なプロセスをプラスしてはじめて、イノベーションということになるのではないでしょうか。

私が今朝話したことをまとめてひとつの指針にしたいと思います。大々的で長期的な政策を実施するなら、計画を実行するのであれば、それはシンプルにしておかなければなりません。フォーカスをおいた、非常に鮮明な形の長期的な目標を2、3たてるということです。そして、なぜこれを実施するのかという理由付けが必要です。このプロセスは個人の力によるものです。たとえば、中世の大教会を造ることもそうでした。大々的な計画を立てても実際に実施する際には、人は他の仕事に移ってしまうこともあるわけですから。知的ベース・政策ベースというものを鮮明にしなければいけません。個人に依存してはいけない。独立した形で実施されなければいけないわけです。 また、効果ということも必要でしょう。効果を生むためにはいろいろなツールがあります。アートはひとつのツールであると思います。その他にもこのようなイノベーションをつくるためのツールがあると思うんです。 では、実際にアートが何を提供してくれるのかということを考えてみましょう。他の再生のためのツールよりもアートの場合は安くつきます。コストはかかりますが短期的なコストで済みます。皆さんのスキルをつくるという形で、大々的なものをつくらなくても提供することができるわけです。ですから、再生のためのアートをコストをかけないでできることになりますし、ローカルなニーズを満たすことができます。また、文化的・社会的なアウトプットを生みます。社会的な一貫性を生みます。西洋諸国において、特に北米などのいろいろなコミュニティを見ていただくと、若い人は社会的な団体に属し、コミュニティに属しています。そういう活動をしている若い人は能力を破壊的な形で発揮してしまうかもしれません。破壊的ではなく、もっとクリエイティブな形で使うことが必要なのです。

次に、なぜアートが観光産業とか外部的なプロモーションとリンクしているのかということです。私が話したプロセスが実行できるのは、まず第一にローカルな人々の関与、ローカルなオーディエンス、ローカルコミュニティが参加してこそ実現できるということです。外からの人だけに依存するということはできないのです。まず、つくらなければいけないのは持続性のあるローカルなコミュニティの参加です。これらがアートに参加してはじめて文化的なファブリックができるのです。そして外から観光産業という物がつくり上げられるということになります。 アートをやっても仕方がないと思っている人がいますが、それは知らないからです。ギネスビールの広告のキャンペーンのスローガンとして「トライしたことがないから嫌いなんだ」というキャッチフレーズが使われています。つまり、アートをやりたくないという人は未経験なのです。20年前アムステルダムでインスピレーションが始まり、そしてバーミンガムでもこのようなことが始まっているのです。このチャレンジを受けて私たちがショーケースとして、無料で外でも内でも約25箇所ですばらしいデモをしています。ポップ、クラシック、シンフォニー、演劇や人形劇、クラシックアーツ、ロックなどを見せています。つまり、いろいろな文化があるのです。そして、人工的なものでもあるわけです。アートには、エキサイティングですばらしいもの、実際にリアクションが生まれるものもあります。その両端を担っているものもあるのです。私たちのプロジェクトは、ウィークエンドに無料のショーケースを実施しています。これもひとつの方法です。つまり、トライするということは、今までできなかった人に対して経験を提供するということなのです。